安倍首相、日中首脳会談に意欲 “北朝鮮との会談より可能性低い”と海外紙は疑問
安倍晋三首相は14日、衆議院予算委員会の閉会中審査で、11月に中国北京で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて、中国の習近平国家主席と首脳会談を持ちたいと述べた。
民主党政権時の野田前首相が決めた尖閣諸島国有化、その後の中国による尖閣周辺上空の防空識別圏設定、さらにそのひと月後には安倍首相がアメリカからも非難を受けることにもなった靖国神社参拝。日中両国は相互に非難を繰り返し、中国は現在に至るまで、尖閣諸島周辺に戦闘機や巡視船を送り、緊張が続いている。
安倍首相は、今回の日中首脳会談の申し出について、領土と防衛に関する両国の緊張の高まりを改善するためだ、としている。
【繰り返し対話を求める日本側】
安倍首相は、「首脳会談ができていないことは大変残念だ。相互を尊重する戦略的関係の原則に両国が立ち返る必要がある」(英ガーディアン紙)と述べた。また、日中の強力な経済関係にも触れ、「関係が緊張を高めても、経済的な結びつきは損なわれることはない。(現在の両国の対立は)国と国が境を接していることで起こる問題なのだろう。まさにこの理由から、事を制御するための関係を維持することが必要だ」と述べ、中国との対話の窓は常に開いていると繰り返した(ガーディアン紙)。
しかし同時に安倍首相は、14日の毎日新聞のインタビューで、今後の靖国参拝の可能性を否定していない。首相は、「国のために命を捧げた人々への、その行いを敬う私の気持ちはこれからも変わることはないだろう。しかし、靖国を再び参拝するかどうかの明言は避けたい」と述べたという。
【中国側も態度を軟化か】
このような申し出は初めてではないが、中国はこれまで受け入れたことはない、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。安倍首相は、昨年10月にインドネシアで開催された前回のAPECでも、中国と韓国に同様の提案をした。しかし、両国ともこれをはねつけた。
中国は、日本が過去の軍国主義を反省していないと非難し、日本は中国が大陸外での利益を追い求め、武力で地域の微妙な防衛バランスを崩していると非難している。
ロイターによると、中国外務省は、今回の日本からの申し出について中国の考えはこれまで何度も説明していると述べたものの、完全な拒否は示さなかったようだ。「日本側は、両国の関係に悪影響を及ぼしている政治的な障害を取り除くため具体的な行動をとり、努力をするべきだ」(ロイター)と中国側は主張した。
【安倍首相、金正恩第1書記と年内に会談?】
日本と中国・韓国の関係がどれほど酷い機能不全に陥っているかは、東アジアで現在最も首脳会談実現の可能性の高い国が、あの北朝鮮だということが示している、とフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
日本政府は5月29日、日本の拉致被害者の調査再開について北朝鮮と合意した、と発表した。そして今月、北朝鮮が拉致問題解決のため独自の権限を持つ委員会を設置したことを確認し、経済制裁の一部を緩和する措置を発表した。
同紙は、被害者の帰国が叶えば、安倍首相が今年中にも北朝鮮を訪問するのでは、との見方を取り上げている。