日本の武器輸出第1号決定か、ロシア紙が批判的に報じる背景とは?
6日付の日本経済新聞は、かねてから三菱重工業がアメリカ企業から引き合いを受けていた、パトリオット2(PAC2)ミサイル用センサーの輸出案件が、政府によって承認される見込みであると報じた。
三菱重工はアメリカの防衛大手レイセオン社からライセンス供与を受けて、PAC2を自衛隊向けに生産しているが、本件ではレイセオンが、三菱重工から調達した部品などでミサイルを組み立て、中東のカタールに輸出するという。
本件は、4月に政府が策定した「防衛装備移転三原則」のもとで、日本が外国に武器を輸出する初のケースとなる。
【新三原則】
もちろん4月に決定した新三原則のもとでも、国連安保理決議の違反国や紛争当事国には武器は輸出できないことになっている。
今回の案件に関して日米両国政府は、カタールが他国と紛争を起こすおそれがないと結論付けた訳だが、『RT(ロシア・トゥデイ)』は、アメリカの同盟国であるカタールが、リビアの最高指導者であったカダフィ氏の追放や、現在も継続中のシリア内戦において積極的な役割を果たしたという報告があるという。
【日本の武器輸出増加策】
戦後数十年にわたって堅持されてきた「武器輸出三原則」緩和の狙いについて各紙は、日本の防衛産業の育成であると述べる。
防衛専門サイト『defenceweb』の2日付の記事では、以下の点から日本政府が武器輸出を増やすために進めている戦略が見て取れるという。
第1に、6月にパリで開催された、世界最大の陸戦兵器・セキュリティ関連の見本市である「ユーロサトリ」に日本企業13社が初参加した。
パラシュート、顔認証システム、地雷探知機といったセキュリティ分野での出展が主だが、三菱重工は新型の8輪装甲車を発表した。他の参加企業としては川崎重工、NEC、日立の名が挙げられている。
第2に、日本は武器の輸出入を促進するための調達機関を1年以内に設置する予定である。
フランスの「装備総局」をモデルに設置される新機関は、「F-35統合打撃戦闘機計画」やアメリカの「SM-3 IIA弾道弾迎撃ミサイル開発」への参画において、スケールメリットを活かしてコスト低減をはかりつつ、日本への技術移転を促進する。
『defenceweb』は続けて、日本の武器輸出緩和にも限度があり、オーストラリア海軍が検討している「そうりゅう型潜水艦」の極秘技術について、日本は未だに売り渋っていると述べている。
だが、6日付けのブルームバーグの記事によれば、オーストラリア訪問中に安倍首相は、日本の潜水艦技術など防衛装備品の共同開発に関する協定に調印する予定であるという。