クールジャパン戦略は「韓国への妬み」が原動力? 英誌が効果に疑問
日本の優れた文化や技術を海外に広める「クールジャパン」戦略は、安倍内閣の成長戦略の目玉である。経済産業省製造産業局に「クールジャパン室」、内閣には「クールジャパン戦略担当」大臣が置かれている。官民共同で「クールジャパン」ファンドも設立され、2015年3月には900億円に投資規模が拡大される予定である。
しかし、海外メディアの中には、官製の“クール”を疑問視する声もある。
【全然クールじゃない】
英エコノミスト誌は、韓国コンテンツの海外人気に対する妬みが、日本の「クールジャパン」戦略の動機だ、と論じている。日本のクールな要素も世界的に認められてきたが、既にピークは過ぎた、という認識のようだ。最先端のクリエイター達は「クールジャパン」と距離を置きたがっており、現代美術家の村上隆氏は、関連イベントに招待してほしくない、と訴えたという。
同誌は、日本政府は何がクールなのか混乱しているようだ、と手厳しい。児童ポルノ禁止法の改正で、漫画やアニメ、ゲームが対象外だったことをあげ、欧米で通用しない表現が温存されていると指摘する。これが日本製コンテンツの海外進出を阻む要因のひとつ、という主張のようだ。
とはいえ、むしろ日本の漫画やアニメの魅力は、背後にある権威への反抗、挑発的なエネルギーにある、と同誌は指摘している。漫画「美味しんぼ」の鼻血表現が問題になった事件をあげ、安倍首相が同作を「根拠のないうわさ」を広めている、と批判したことを問題視しているようだ。
【クールジャパンは世界の政策モデルになる?】
「クールジャパン」に対する冷ややかな意見がある一方で、企業家を育成する可能性に注目する声もある。海外メディア『Econintersect』は、「クールジャパン」ファンドにより、多くのクリエイティブな中小企業が世界市場にアクセスできる、と指摘している。
1960年代から70年代に日本経済の奇跡が注目されたように、「クールジャパン」は世界中の政策者のモデルになるかもしれない、と同メディアは結んでいる。
最近でも、日本の政策に注目した例がある。インドのモディ首相が発表した「啓発された自己利益」を推進する対外政策に関し、もともとは、日本が海外開発協力政策を形容する際に使用した言葉、とザ・ヒンドゥー紙は指摘している。日本は他国に開発資金やローンを供給し支援することにより、それらの地域における影響力を大いに強めた。
日本文化を海外に広めながらビジネスにつなげようとする「クールジャパン」戦略は成功するのか、国内外が注目している。