アベノミクス成長戦略、移民受け入れか “少子化対策だけでは無理“な人口目標に海外注目
政府が今月27日の閣議決定を目指す、新たな成長戦略の骨子案が明らかになった。アベノミクス「第3の矢」となるもので、法人税率の引き下げや、少子化対策、農協改革などが盛り込まれている。海外メディアの関心も高いが、概ねその実現性や効果には懐疑的だ。
【法人減税は財源確保などが課題】
ブルームバーグは、政府が「成長志向型の法人税改革」と謳う法人減税に着目する。骨子案に盛り込まれた内容を伝える記事の中で、減税の規模と実施の時期はまだ議論の途上にある、という甘利経産相の発言を取りあげ、「詳細がもっと明らかにならなければ、市場の支持は得られないだろう」という証券会社の専門家の見解を紹介した。
日本の法人税は、東京の大企業で約36%だ。政府は今、これを世界標準の25%に近づけようとしている。金融緩和、公共事業の拡大に次ぐ、アベノミクスの「第3の矢」の中核とも言える政策だ。政府はTPPなどの規制緩和と法人減税のセットでビジネスの自由度を上げ、「持続的な経済成長」を促すことを目標に掲げている。
しかし、財務省によれば、法人税率が1%下がるごとに政府の歳入が4700億円程度減るという。ロイターはこうした数字を取り上げ、法人減税の財源がいまだに確保されていないことを問題視。国の借金が世界最悪レベルにある中、政府内には慎重論も多い、と疑問を投げかけている。
【大胆な移民政策が必要】
骨子案には、減り続ける人口を、今後50年間で20%減の1億人程度に保つことも目標に盛り込まれた。ロイターは「外部の専門家は、移民の受け入れなしにこの目標を達成するのは難しいと指摘している」と記す。
今回の骨子案には移民拡大政策への直接的な言及はないが、政府はホワイトカラーの専門職の海外からの受け入れと、単純労働者を研修制度のもとで受け入れることを推進している。ロイターによれば、政府は今後、研修生の滞在期間と労働可能な範囲の見直しを含む研修制度の「全面改革」を行う計画だという。
ウェブ誌『ディプロマット』のオピニオン記事も、少子化対策に着目する。3人以上の子供を持つことを奨励する予算が拡大される見込みだとし、首相の「結婚、妊娠、出産、そしてシームレスな子育てを支援する」という発言を引用。しかし、最終的には移民の大規模な受け入れを含む「大胆な手法」が、1億人以上に人口を保つためには必要だとしている。
【最後の秘策は中国・インドとの同盟?】
同誌は、骨子案に盛り込まれた農協改革にも触れている。案をまとめた政府の産業競争力会議は、全国農業協同組合(JA全中)が地域の農業経営を指導する力を失いつつある、と見ているようだ。今回はそれを反映して、JA全中を新しい組織に置き換えるなど、農協そのもののあり方を見直す方針が明らかにされた。
一方、ブルームバーグのコラムニスト、ウィリアム・ペセク氏は、日本と中国、インドが「再生のための同盟」を結べば、世界経済の復興の起爆剤になる、と主張する。中国の習近平国家主席、インドのモディ首相、そして安倍首相は、それぞれ同時多発的に経済再生戦略を掲げていると指摘。世界最大の人口を抱えるアジアの3大国が協調すれば、アメリカとヨーロッパに対する強烈な対抗勢力にもなる、としている。
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