日本の対北政策を韓国紙が批判 “韓国主導の南北統一をけん制”
5月末に行われた日朝政府間協議の後、北朝鮮が新たに拉致被害者の再調査をすることに合意した。6日のG7首脳会議では、日本の拉致に対する取り組みに理解が示されたが、海外メディアからは、北朝鮮の核開発問題に対する国際協調を乱すことに繋がるのでは、と懸念の声も挙がっている。
【日本が北を利する?】
北挑戦が拉致被害者の再調査を始めた時点で、日本は独自制裁の緩和を約束。朝鮮総連による送金や企業取引が可能になった。池海範(チ・ヘボム)東北アジア研究所長は、韓国の朝鮮日報への寄稿で、もし数兆円規模の植民地時代の賠償金が北朝鮮に支払われれば、「北朝鮮の核武装は一層進展するかもしれない」と懸念を表明。同氏はこれを、「韓半島における中国の影響力を弱め、韓国主導の南北統一をけん制する狙いがあると考えるべき」と主張する。
またウォール・ストリート・ジャーナル紙は、内政上、拉致問題解決を目指す安倍首相には一定の理解を示すものの、解決のためにどのぐらいのコストが適切であるか、そして今後、日本がどんな方針で北に対応していくのかが問題であるとしている。
同紙は、拉致問題解決後に日朝国交正常化を目指しているとされる日本の外務省に対し、優先して解決すべきは北の軍事的脅威であり、外交関係改善は、「憎むべき金政権が終るまで」待つべきだ、と釘を刺している。
【正恩体制で進捗はあるか?】
一方APは、金正恩氏の出方に注目。昨年側近であった叔父を粛清して以来、正恩氏は大胆な決断を自ら下せる立場にある、という専門家の意見を紹介している。
慶應義塾大学の磯崎敦氏は、正恩氏は計算高かった父親とは違うスタイルを取ると分析。「決断を下すのが早く、過激な決定をする傾向がある。かなり早く、なんらかのアクションが見られるのではないか」と述べ、今までにない進捗の可能性を指摘した。
磯崎氏は、日本の制裁解除は、瀕死の北朝鮮にとって大きなインパクトとはならないとする。ただ、北が力を入れて宣伝する旅行や観光を通して、在日朝鮮人コミュニティの金が流入することになれば、北にとっては大きな収穫だと述べている。
【完全解決は無理?】
APはまた、拉致問題の解決を急ぐあまり、日本政府に拉致と認定された人(現在17人)以外の特定失踪者が、置き去りにされるのではという懸念も取り上げている。
特定失踪者問題調査会の荒木和博代表によれば、調査会が作成したリストに掲載された特定失踪者は271人。しかし警察が拉致の可能性を排除できないとした人は、868人に上る。
荒木氏は、全員を特定する前に、政府が解決を図ることを心配する。また、北が制裁解除を狙って、それに見合う断片的情報しか出してこないこともありうると述べている。「完全解決には至らないかもしれない。しかし、最大限可能な限り、返還を求めねばならない」という荒木氏の言葉が、解決の難しさを表している。
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