「五輪のために労働力はほしいが、移民は嫌」 日本の鎖国姿勢を海外紙が批判
日本の総人口は2008年をピークに減少しつつあり、このままなら2050年までに1億人を割るとみられる。フィナンシャル・タイムズ紙は、2100年代初めまでに人口は半減、または3分の1になる可能性さえあると述べている。労働人口も1997年6月に6900万人でピークを迎え、今年3月には6500万人、2060年には3800万人まで減ると内閣府は予測している。
同紙は、現在退職年齢人口1人に対し労働年齢人口3人であるものが、今世紀半ばには1対1に近くなり、それは「世界で最も重い公債負担を持ち、国家予算の3分の1がすでに年金や医療へ行っている国にあっては、潜在的に破滅的」だと警告する。
【リストラのツケ】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は名古屋周辺の運送会社や建設会社を取材し、景気改善で仕事がきても、人手が足りない状態であると報じた。かといって、より高い賃金を約束する余裕は、日本の多数派である中小企業にはないという。
失業率の低さや大企業の基本給・ボーナス増額など、「一見、日本の雇用情勢は健康に見える」が、消費税増税で4月の家計支出は前年比13%減、賃金はそれを防げるほど上がってはいない。中小企業は一層フルタイム従業員を減らして、解雇しやすいパート・派遣労働者依存を強めている。
同紙によると、労働者不足は特に運輸、建設、ホテルのような労働集約的部門で顕著で、とりわけ建設業の深刻さの一因は、不況時代の不動産需要減で多くの人が転職を余儀なくされたためだという。そのため従来男性の職業であった建設業などに、女性の導入を試みる動きもある。
【移民を呼ぶのか?】
政府には、規制緩和により、現在年間5~8万人程度である移民を、10~20万人レベルに拡大するという意見もある。専門家によると、20万人でもまだ、出生率増加なしでは人口減少を補うには足りないようである。
ブルームバーグによると、さしあたり2020年オリンピック関連の建設を間に合わせるため、政府は30万人必要とされるうちの半分、外国人建設労働者をアテにしているという。また、政府は先月、3年間の技術研修プログラムを終了した建設労働者に、2年間の追加滞在を認めた。
しかし従来日本は移民制限が強く、国民もまた「旅行者は歓迎しても」移民は嫌っている。ブルームバーグの主張では、徳川幕府の長い鎖国政策もそうした文化の一因とのことだ。日本の人口のうち外国人は1.6%と、諸外国に比べ非常に少ない。読売の世論調査では、79%が、人口減少は国に悪影響を与えると思っているにも関わらず、54%は移民受け入れ増に反対であった。
フィナンシャル紙も、移民(および女性労働力)増を公約していたはずの安倍首相が、テレビ番組で「移民を受け入れた国では、多くの摩擦があり、多くの不幸がありました。新参者にも既存住民にもです」と、移民反対を明言したことを報じた。
【日本側の身勝手な搾取】
外国人労働者政策担当の西村康稔・内閣府副大臣は、「我々は移民という単語を使いません」と語った。同紙は、労働力は欲しいが外国人は嫌だという日本人は、語学・技能実習などを名目とした「裏口制度」で外国人を呼び込んでは「低賃金、劣悪な労働条件、悪徳ブローカーへのリベート」で搾取しており、子女へのいじめもあると告発している。
今やコンビニ店員は中国人学生だらけであり、東京の外食産業は外国人料理人と食器洗浄機なしでは「生き残れない」という。また、日系ブラジル人などを多数集めた企業城下町において、不況で工場が閉鎖され大量帰国を余儀なくされる場合もある。ある専門家は、オリンピックで外国人客がきたとき「真に世界に開かれている日本を目にする」ようでなければならない、と訴えている。
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