集団的自衛権、産経「7割賛成」、毎日「4割賛成」…なぜここまで違う? 海外紙の疑問

 安倍首相は15日、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」から提出された報告書に基づき、集団的自衛権の必要性を説く会見を行った。これを受け、海外各紙が日本の今後の動向を分析している。

【容認にむけ前進か】
 タイム誌は、この会見を「安倍首相が集団的自衛権の行使容認に向け一歩前進した」と表現している。

 「日本に期待されている世界的な役割を考えると、防衛の危機にある国際社会を支援する力を持つべきというのが安倍首相の主張であり、これはアメリカも長年日本に求めてきたこと」と、パシフィックフォーラムCSISのブラッド・グロッサーマン氏は分析する。

 しかし当然のことながら、こういった動きは日本の近隣諸国の一部で問題視されていると同誌は述べる。特に中国と韓国は、日本の軍国主義回帰を警戒している。

 また国内にも反対は根強い。大東文化大学のギャレン・ムロイ客員教授は「新たな解釈により自衛隊の海外派兵が増えると、派兵実績の積み重ねが改憲へとつながるかもしれず、ひいては平和な国としてのイメージを損なう」というのが国民の懸念だと分析している。

 そのような不安の声に対し、キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦氏は「日本がことあるごとに派兵するような事態にはならない」との見解を示している。「集団的自衛とは、権利であり、義務ではない。政府は、それぞれの状況に基づいて判断を行う。日本は、”民主主義の下自らを制御し自己規律に基づいて行動できる国である”ことを世界に示さなくてはならないから」と同氏は語っている。

【アメリカとの関係はどうなるのか】
 一方フィナンシャル・タイムズ紙は、安倍首相のこうした動きがもたらす「アメリカとの関係のあり方」における懸念に着目している。

 安倍首相は15日の会見で「日本が湾岸戦争やイラク戦争のような紛争に参加することはない」と有権者にアピールしたが、国民の多くはそうは見ていない、と同紙は伝える。なぜなら、日本人は自国の指導者がアメリカに「NO」と言えるとは思っていないからだという。

 集団的自衛権は「日本がより高い自治力を身につけるもの」と安倍首相は位置づけているが、世論の約半分はむしろ「アメリカのより忠実な従僕になるだけだ」と考えている、と同紙は伝えている。

 一方のアメリカは、ここ数十年日本の集団的自衛権行使を推奨し、容認を促している。昨今は中国の急激な台頭と、それに伴うアメリカの影響力の相対的低下により、その意向はもはや「希望」というよりは「必需」となりつつある、と同紙は指摘する。

【公平な世論調査すら困難】
 安倍首相にとって国内世論の説得は大きな挑戦だが、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、このような意見のわかれるトピックでは、そもそも世論調査を中立な方法で行うことすら難しいようだ。

 例えば日経新聞の調査では、47%が集団的自衛権の行使に反対、37%が賛成との結果がでた。毎日新聞の調査でも54%が反対、39%が賛成と比較的近い結果がでている。

 しかし保守的な産經新聞の調査では、「全面的に賛成」と「必要に応じて最小限の使用に賛成」をあわせた約70%を賛成派が占めた。もうひとつの保守派である読売新聞でも、同様の結果が得られたという。

 実は、日経と毎日の両新聞とも、回答者の意見を聞く前に「現在の憲法解釈は集団的自衛権を禁じている」ことを説明しているという。そして産經では読者の回答を求める前に「日本は集団的自衛権を持っている」と説明しているのだ。このような調査ゆえ、日本のメジャーな新聞でも結果に大きなばらつきがでる、と同紙は指摘している。

 ちなみにNHKの調査では、回答者の30%が賛成、27%が反対、37%が「どちらともいえない」を選択したという。

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Text by NewSphere 編集部