「慰安婦、靖国は“おとり”だ」 日本が世界に隠したい秘密は別? アイルランド人ジャーナリストの主張が物議

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 国家公安委員長の古屋圭司議員が20日、靖国神社に参拝した。同氏は定期的に靖国を参拝している議員のひとりであり、今回の参拝は21日から23日の春季例大祭にあわせ、1日前倒しして行われたという。

 また安倍首相は21日、靖国神社に「真榊(まさかき)」(神前に捧げる供え物)を、「内閣総理大臣 安倍晋三」の名前で奉納した。参拝は見送った。

【慰安婦も靖国も問題ではない?】
 このニュースは、中国や欧米メディアが広く報じている。しかし、そんな状況に疑問を投じるジャーナリストがいる。

 アイルランド人ジャーナリストのエーモン・フィングルトン氏は、フォーブス誌に寄せた記事で「靖国も慰安婦も、実は”日本が本当に隠したいこと”から目を逸らすための、おとりにすぎない」という持論を展開している。

 日本が本当に隠したいこととは何か。いくつかある中のひとつは、「自動車業界を守るための、過保護なまでの閉鎖性」だと同氏は言う。例えばフォルクスワーゲンは、日本市場でのシェアはわずか1%だ。

【閉じられた自動車業界】
 日本の自動車業界の実態は決して晒されていない、とフィングルトン氏は指摘する。同氏によると、表向きは自由貿易を始めた50年前から、日本の自動車業界は世界で最も閉鎖されたままだという。

 アメリカの車は確かに日本の道路には合わない。だから現状アメリカ車が日本市場で苦戦するのは仕方がない。しかしアメリカのビッグ3は、”フェアな”ヨーロッパで子会社を展開し、当地用の車を多数生産している。彼らは日本車とも互角に戦っており、非関税障壁も特に怖れていないという。ならば日本でも同様のやり方ができれば、アメリカのメーカーも日本で成功できるはずだ、と同氏は主張する。

【メディア策略の手法】
 こうした事情があまり報道されないのは、海外メディアが日本の当局により完全にコントロールされているからだ、とフィングルトン氏は主張する。

 その「おとり作戦」として使われているのが、靖国問題や従軍慰安婦問題だという。国にとって、過去の問題について何度も議論が蒸し返されるのは、本当の問題が暴かれるよりもむしろ安全なのだと同氏は指摘する。

 その最たる証拠が 日本の英字新聞ジャパン・タイムズだという。同氏によると、オランダ人の日本研究家であるカレル・ヴァン・ウォルフェレン氏は、同紙を「外務省のメガホン」と位置づけているそうである。

 日本にいる欧米ジャーナリストのほとんどは日本語を読めないから、同紙は多くの報道の情報源になっている。この「都合の悪いことを隠す」策略において、ジャパン・タイムズは、共同通信と組んで海外各メディアをコントロールしている、とフィングルトン氏は考えている。

 中国の新華社通信は古屋議員の靖国参拝に憤りを表し、AP通信はそのことに怒る中国を報じている。毎度のこの構図も、フィングルトン氏の目には「結局日本の情報操作に操られているだけ」と映っているのかもしれない。

【同氏の主張の根拠】
 一般論として、日本市場の閉鎖性は度々指摘されてきた。しかし、日本の自動車の輸入関税はゼロであり、世界的にも開放度の高い市場だ。おそらく同氏は、規格や法規制などの非関税障壁のことを指しているのかもしれない。それにしては具体例が挙げられていない。外車メーカーが「他国ではうまくいっている」ことは、日本が不公平な規制をしているという根拠としては弱い。

 また、100年以上の歴史を持つジャパン・タイムズ紙(と共同通信)を、他人の発言を根拠に中傷していることも、説得力を弱めている。もし、日本にいる欧米ジャーナリストが日本語を読めず、ソースが限られることで報道内容が偏る、という問題提起だとしたら、聞くべきものはあるのだが。

 さらに、靖国や慰安婦については、現に日中、日韓関係、さらには日米関係にまで影響を及ぼしている。日本政府の意図しない形でだ。だからこそ、海外メディアはこれらを積極的に報じている、と考える方が自然だろう。

 なお同氏は、フィナンシャル・タイムズ紙の編集者などを経て、長く東京に在住しているという。『製造業が国を救う』などの著書もある。2012年には、日本の「失われた20年」はサクセスストーリーだった可能性がある、という論説をニューヨーク・タイムズに寄稿して、注目を集めた。

 どんな意図でこうした乱暴な論説を公開したかはわからない。ただ、同氏はコメント欄で、重要なポイントは「検閲」と語っている。自身が問題と考えるトピックが、見えない圧力のせいで報道されない現状に、憤りを感じているのかもしれない。

Text by NewSphere 編集部