「日本の軍国主義回帰はあり得ない」と海外紙 安倍政権の動きは対中抑止のためと分析
オバマ米大統領の訪日が約1週間後に迫り、各メディアが関連報道を繰り広げている。海外メディアの間では、ここに来て安倍晋三首相が現実主義に回帰し、その“右寄り”な政策を軌道修正しつつあるとする論調が目立っている。
【安倍首相の“軟化”は、オバマ政権への配慮か】
「安倍氏は最大の同盟国であるアメリカに対し、自分の政府の意図を再認識させる必要性を感じているようだ」。エコノミスト誌は、リニア新幹線の試験走行に同乗した安倍首相とキャロライン・ケネディ米駐日大使が満面の笑みを浮かべたツーショット写真を大きく掲載し、首相の最近の動向を論じている。
同誌は、安倍首相が3月の国会で「“従軍慰安婦”への謝罪を見直さないと誓った」ことが、 首相の靖国参拝に「失望」を表明していたアメリカを安心させたと記す。日本通で知られるコロンビア大学のジェラルド・カーティス氏は、「安倍氏は、側近たちによる歴史修正論的な発言を止めなければいけないことを、今やしっかりと理解しているはずだ」と述べたという。最近の首相は、そうしたイデオロギーに寄り添うことよりも、日米同盟の強化や経済再生を重視する現実路線に向いている、という見解を示している。
ロイターは、アメリカが日中間の歴史認識問題に絡んでネガティブな反応を示したことは「過去の政権ではなかったことだ」とする日本の元外交官のコメントを掲載した。さらに、「日本では、民主党は親中で共和党は親日だと見られている。ホワイトハウスに共和党員しかいなければ全てがサイコーだとね」という、カーティス氏のユーモアを交えた意見を載せるなど、安倍内閣の“軟化”はオバマ政権に対する一定の配慮の結果だとする記事を展開している。
【オバマ大統領のクリミアでの対応は中国へ弱気のメッセージ?】
一方でロイターは、日本の世論に見え隠れするオバマ大統領への不信感を懸念する。日本では、オバマ大統領は(クリミア危機において)ロシアのプーチン大統領を抑える力に欠けていると見られていると分析。そのため、尖閣諸島の領有権を主張する中国に対しても、弱さを印象づけるメッセージになってしまっているのではないかと心配する声が挙がっていると報じる。
ディプロマット誌は、「平和憲法の再解釈、国家安全保障委員会の設立、防衛五カ年計画に伴う防衛予算の拡大などの一連の安倍政権の防衛政策は、単に日本の防衛的なニーズに対応するために行われているものだ」と論じる。アメリカの力が相対的に弱まっていると見られる中、台頭著しい中国の軍事力に対抗するためには、こうした日本独自の防衛強化策は必然であると、同誌は言う。
【軍国主義への回帰はない】
上記の論調は、中国・韓国が主張する“日本の軍国主義への回帰”について考証した16日付の論説記事の中で触れられた。ディプロマット誌の結論は、日本が軍国主義に回帰するなどということはあり得ないというものだ。
同誌は、戦後の日本は非常に民主的なプロセスを経て軍事力のシビリアン・コントロールを実現しており、「現実として軍国主義的な過去に戻ることはできない」と論じる。そして、中国と韓国が繰り返し「軍国主義者」「ナショナリスト」と非難する安倍首相が目指すゴールは、「攻撃性を強める中国に対する、信頼できる抑止力を維持することである。それは明らかに軍国主義への回帰ではない」と記事を結んでいる。
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