“河野談話は見直さない”明言 米国は評価も、韓国は「手土産」待ちで様子見の構え

 菅義偉官房長官は10日、日本政府は、いわゆる「河野談話」を見直す意図はない、と明言した。談話は1993年、戦時中の従軍慰安婦制度への旧日本軍の関与を認め、心からの「お詫びと反省」を述べたもの。閣議決定はされていないが、河野洋平官房長官(当時)により、内閣の意思として発表された。

 ただ、菅氏は、河野談話の内容を見直すつもりはないが、元慰安婦の証言など、それを裏付ける証拠の検証は続けるだろうとも述べた。検証の結果、疑問が生じた場合の対応には言及しなかった。

【見直し発言は安倍政権支持者への配慮】
 ニューヨーク・タイムズ紙は、菅氏の談話見直し発言は、ナショナリスト議員らからの圧力のもと行われたとみている。これは、右寄りの安倍政権支持者をなだめるための政治的な術策にすぎない、との批評家の見解も取り上げている。

 ブルームバーグなどは、安倍首相が河野談話を破棄するのではという韓国の懸念を根強く、両国関係悪化の要因だ、と報じている。実際、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は先週、国連の人権問題に関する会合で、日本が「犠牲者の尊厳と名誉」を侮辱していると非難していた。

【アメリカは河野談話支持を歓迎】
 AP通信によると、米国務省のサキ報道官は10日、安倍政権が河野談話を見直さないとの発言を「前向きな一歩」と評価した。この問題をめぐり、同盟国である日韓の亀裂の深まりをアメリカは憂慮しているとみられる。

【韓国は日本の今後の対応を様子見】
 朝鮮日報は、菅長官の発言について、韓国外交部当局者の「いつも繰り返している話。言葉だけでなく行動で示すべき」というコメントを掲載。河野談話継承の立場を明言しながら、談話の作成過程を検証する方針を示すなど、日本政府の動きへの不信感が強い。

 同紙は日本に対し、河野談話の継承に加え、慰安婦問題に関して、日本が法的な責任を認め補償することを求めている。12日に予定されている斎木事務次官の訪韓に対しては、どのような「手土産」で関係改善を図るのか、政府は様子見の姿勢だと報じる。

 なお、韓国、中国から、菅氏の談話継承発言への公式な言及は今のところみられない。

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Text by NewSphere 編集部