河野談話見直しありえる? 海外メディアから予想外に大きな懸念
1993年の河野談話の作成に深く関わった石原信雄・元官房副長官が、20日の衆院予算委員会で、談話の基となった16人の元慰安婦の証言について、政府は裏付け調査を行わなかった、と公表した。菅官房長官は、野党議員の質問に答えるかたちで、今後、証言を検証するチームを設立する可能性について言及した。
このことが、日本の世論と、海外メディアの強い関心を呼んでいる。AFP、ウォール・ストリート・ジャーナル紙、ドイツの公共国際放送ドイチェ・ベレといった各メディアが取り上げている。
【河野談話見直しについて、世論調査では】
産経新聞社とFNNは、22、23両日、合同で世論調査を実施した。その調査によると、「河野談話を見直すべき」がYes 58.6%、No 23.8%。また「調査のあり方や談話が出された経緯などについて検証すべき」がYes 66.3%、No 20.8%となっている。
この調査において用いられた質問文は、
「慰安婦募集の強制性を認めたと受け取れる『河野談話』について、軍や官憲による強制連行を裏付ける公的資料が見つかっていないほか、元慰安婦に対する調査のずさんさが指摘されているが、『河野談話』を見直すべきだと思うか」
というものだった。これが誘導的であるとして、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、この調査が世論全体を反映したものであるかどうかには、疑いが残る、と主張する。また、安倍首相が、この数字に満足しているようだということを、他紙の報道を引用しつつ述べている。
安倍首相にとっては、今回のこの動きは、歓迎すべきもののようだ。第1次安倍内閣時代の2007年にも、「政府が発見した資料の中には、軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示すような記述も見当たらなかった」との閣議決定がなされている。とはいえ、影響の大きさから、政府全体としては当然、この問題には慎重を期することになるだろう。岸田外務大臣は25日、「政府としても、談話の見直しを一度も申し上げたことはない」と言明している。
【気になる、各紙報道の共通点】
海外各紙は、一様に、河野談話を「画期的な謝罪」と位置付けている。そして、河野談話を踏まえて、慰安婦が強制されたものであることを、既定事実として報じている。英語圏では、慰安婦問題は「性的奴隷」を意味する語で報じられることが一般的で、強制性はすでに前提となっている。
【アメリカに設置された慰安婦像をめぐる動き】
米カリフォルニアのグレンデール市に、昨年、慰安婦像が設置された。この像のそばに、「1923年から1945年のあいだ、日本帝国軍によって、強制的に性奴隷にされた、20万人以上のアジアとオランダの女性を記念するために」と書かれたプレートがある、とドイチェ・ベレは伝える。
現在、この像の撤去を求めて、同地在住の日本人などからなるNPO「歴史の真実を求める世界連合会」が、市を相手どって提訴している。連邦政府だけがもつ外交権限を、市が侵害している、との主張だ。さらに、このプレートの文言が、グレンデール市議会による承認なしに付記されたものだという点も、提訴の理由の一つとなっている。そして、AFPは、「評価の高い歴史学者ら」の見解として、慰安婦の総数は20万人に上る、と伝える。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙とドイチェ・ベレは、そろって、狛江市の市議会議員である辻村ともこ氏の言動を大きく取り上げている。氏は、「慰安婦像設置に抗議する全国地方議員の会」(英名では「歴史のねつ造に反対する日本の議員連合」)に属している。同会は、慰安婦像設置に抗議するため、グレンデール市を訪れた。また、それについて、先日、外国人特派員記者クラブで記者会見を行った。
ドイチェ・ベレは、「日本の保守的なグループ」の代表として、慰安所で働いていた女性は、軍によって強制されたのではなく、自発的に行っていた、とする同氏の主張を取り上げる。そして、日本の世論の中で、韓国などへの反感から、このような主張を支持するうねりが次第に大きくなっている、と述べる。
その主張に、韓国側の主張を対立させているので、読者は、「慰安婦は全員強制された」という主張か、「慰安婦は全員自主的だった」という、二者択一、1か0かの主張しか存在しないような印象を与えられるかもしれない。