日中“戦争”はあるのか? 90歳キッシンジャー元米国務長官が憂慮
1日、ドイツで開かれたミュンヘン安全保障会議におけるパネルディスカッションで、中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)外事委員会の傅瑩主任は、日中関係が「恐らく最悪」の状態にあると指摘。中国政府は地域の安定を維持するため行動すると述べた。ブルームバーグによれば、傅氏はさらに、昨年12月の安倍晋三首相の靖国神社参拝に触れ、日本が戦争犯罪の「歴史を否定」していると非難した。
これに対して、日本の岸田文雄外相は同じ会議で、傅氏の発言に反論。日本は過去をしっかりと反省してきたと表明するとともに、日本の中東とアジアにおける平和維持活動や核不拡散への貢献を説明、安全保障問題に関して「中国との対話を求めたい」と語った。
【日中関係が「最悪」となるまでの経緯】
発端は2012年に、日本政府が地権者から尖閣諸島を購入したことだったとブルームバーグは述べる。昨年11月に中国が、この地域を含む東シナ海上空に防空識別圏を設定したことで緊張はさらにエスカレートした。
さらに、中国が南シナ海にも防空識別圏の設定を検討していると朝日新聞が報じた。これを受けて中国外務省は、南シナ海には防空圏は不要で、「防空面でいかなる脅威も感じていない」との声明を発表したとロイターは伝える。中国外務省は、日本こそ世界の目を自国の軍拡計画から逸らそうとしており、「日本の右翼勢力は中国がすぐにでも防空圏を設けるかのように言い立てているが、これは日本が軍拡を行うことを隠すための陰謀だ」と非難したという。
一方、2日には、中国海警局の艦船が係争水域を航海して、緊張が高まっているとAFPは報じている。公船3隻が釣魚島(尖閣諸島)付近を巡航したことについて、中国国家海洋局は 「釣魚島周辺の中国領海」のパトロールであると述べたという。
【日中関係はどう見られているか】
ミュンヘン安全保障会議の場において、中国と日本との間で緊迫したやり取りが行われた際、パネルディスカッションに参加していた元アメリカ国務長官のキッシンジャー氏は、この先アジアで戦争が起きるのではないかと心配していたと、ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌は報じている。90歳になるキッシンジャー氏の分析では、「アジアは軍事紛争が禁じられていなかった19世紀のヨーロッパの状況にますます近づいてきており、世界からすれば日中両国が武力に頼って問題を解決しないかが問題である」という。