英紙“安倍首相がダボス会議を面白くした” 中韓記者と対照的、好評価の理由とは?
フィナンシャル・タイムズ紙は、スイスで開催されたダボス会議(世界経済フォーラム)を今回、「一番面白くした2首脳はイラン大統領ハッサン・ロウハニと、日本の安倍晋三首相だった」と評した。同紙はダボス会議を「ミニ国連総会」と表現しており、そこで首相は今回、日本首相として初めて基調講演も務めた。
同紙は、首相が現在の日中関係を100年前・第一次大戦直前の英独関係に喩えたことなどをすでに報じているが、首相に対する総括評価はどのようなものか。
【日本首相らしくなかった安倍首相】
昨年8月に就任したロウハニ大統領と就任1年余りの安倍首相は、ともに従来のイラン指導者や日本首相のイメージとだいぶ違ったことが、新鮮だったようだ。
「日本の首相というのはほぼ例外なく、お固くフォーマル」であったのに対し、安倍首相は「西洋の同業者たちも奮い起こしにくいほどの情熱とエネルギーをもって、経済改革について話した」と描写されている。
また「中国の習近平主席の準帝国的スタイルとは対照的に」控えめで、会見での立ち居振る舞いなどが印象的なほどインフォーマルであった、という。ロウハニ大統領も柔和な笑顔で経済を話題の中心とし、中東の政治的対立についてあまり言及せず、「怒れるイラン指導者」とのイメージがなかったようだ。
第一次大戦比喩の件も、同紙によれば実際には「論証的」なトーンであり、それほど好戦的な印象ではなかったとのことである。むしろ靖国参拝問題について首相の歴史認識を問い質した中韓のジャーナリストのほうが、「執拗で感情的」と表現されている。「安倍は今年の世界経済フォーラムを、おそらく成功とカウントしてよいだろう」という。
【注目が集まるアジア緊張】
首相のダボスでの諸発言に中国外務部は都度、非難を表明しているが、ロイターは首相が26日CNNのインタビューでも、「中国が経済的繁栄を享受し続けるには、緊張ではなく、信頼的国際関係を醸成する必要があります」「軍事拡大は、中国の将来、経済成長、繁栄には何ら貢献しないでしょう」などと発言したことを報じている。首相は「日本の領海、領土、日本人の生命財産を保護する責任」を全うする、とも宣言しており、改めて中国の反発を招きそうである。
またタイム誌は「ダボスで判った3つのこと」として、
・みな米国経済については強気で、米国の外交政策やグローバル政治が変わることを心配している
・先進諸国と新興諸国の中産階級が(生産者・消費者としての立場を)交代している
・銀行家らは金融システムが安全化したと思っているが、他に誰もそんな人はいない
と総括した。
その中で、アメリカがエネルギー自給力を高める(シェールガスなどの産出増を指していると思われる)に伴って中東には関心が薄まり、その外交的隙間は中国が埋め、紛争の中心地は東・南シナ海などアジア方面に移る、との見方が示されている。