日本、中国、韓国…なぜ相次ぎNSC設置 海外メディアが見る3つの理由

 2013年後半は、安倍政権のナショナリスト路線明確化が多く報じられた。12月には新防衛大綱が閣議決定されたほか、首相直属の日本版NSC(国家安全保障会議)が発足し、外交・安全保障上の意思決定が首相周辺に集約された。有事への意識を強めているともいえるこうした動きについて、海外識者らが論じている。

【アジア中でNSCがもてはやされる理由】
 フィナンシャル・タイムズ紙(カート・キャンベル元米国務次官補寄稿)は、日本だけではなく中国も常任委員会の中心に同様の組織を設立したばかりであり、他に韓国・オーストラリアなど地域各国も、やはり小型のNSC的組織を備えていると指摘した。こうした傾向は決定的であり、おそらく、それによってアジアの「緊張は増すが処理容量はもっと増える」だろうという。

 NSCが流行っている理由は3つあるとのことだ。一つはアジアの安全保障環境が急激に変化するようになり、「意思決定に何日も何週間もかけてよい時代は終わった」ことである。そんなことでは「24時間のニュースメディア」に叩かれてしまうという。

 二つ目はアジア中でナショナリズムが強まり、外交成果で失敗が許されなくなったことだ。外務省や防衛省といえども、従来の政府組織にはどんな政治性向のスタッフが居るか判らず、政府首班らにとってみれば信用できないという。

 三つ目は本家の米NSCが、特に9.11事件後のテロ対策やイラク・アフガン戦争で存在感を発揮したのを目の当たりにしたことだ。また、「面倒な外務省のやりとりを介してではなく直接ホワイトハウスに接触できる、効果的な官僚組織を欲しがるのも無理はない」という。それが証拠にアジアNSCの構成は自ずとアメリカ式を真似ることになり、米NSCとのコミュニケーション能力も重視されているという。

【いいぞもっとやれ!歓迎するインド学者】
 モダン東京タイムズ(印ジャワハルラール・ネルー大学のラジャラム・パンダ博士寄稿)は、中国との緊張が高まっている以上、平和憲法や武器禁輸原則の見直しさえも不思議なことではなく、悪いのは明らかに中国側だと言い切っている(なおインドも中国・パキスタン連合と対立している)。

 中国は日本が「中国の軍事的脅威を誇張し、自らの軍拡のアリバイとして利用している」と非難しているが、それは中国の防空識別圏宣言などの動きを受けてのことであり、中国こそ周辺の小国を威圧し、世界帝国として復権を目論んでいる、と記事は述べる。中国は「日本のどんな安全保障上の動きにも偏執的であって、いつも自分が敵とみなされていると見ている」ようであり、また日本が武器輸出で友人を増やすことを最も心配しているという。

 著者はナショナル・インタレスト誌の記事も、完全に同意するとして長文引用している。それによると、中国は最も海上貿易依存の強い国のひとつであり、中国から見ると日本列島から沖縄、台湾、フィリピン、インドネシアにかけての「第一列島線」は、太平洋・インド洋への出口を塞ぎ、海上交通を脅かす障壁に他ならない。だからこそ中国は海上進出にこだわり始めている。そこでアメリカは潜水・駆逐艦勢力に優れた日本をはじめ、それら列島線各国を糾合し、相互補完的戦力を構築することで、中国を守勢一方に追いやるべきだ、と記事は主張している。

Text by NewSphere 編集部