安倍首相、ASEAN諸国に“片思い”? 対中連携で奔走も、つれない反応
東南アジア諸国連合(ASEAN)特別首脳会議が13日、東京で開幕した。会議には、ASEAN10ヶ国 (ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)が参加したが、これらの国々に加えて通常参加する中国と韓国は不参加だ。
会議では、通貨スワップ拡大、台風被害にあったフィリピンへの9700万ドルの援助などについて話し合われる予定。また、日本は東南アジアへの5年間で194億ドルの援助を発表する予定だ。
14日に決定する共同声明は、国際法で認められている「公海上空の飛行と安全の自由」に関する重要性を強調し、国連の民間航空局への協力を誓う内容になるとみられる。
【中国に対抗する団結力を強めたい日本】
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、安倍晋三首相が就任後、外交のためにASEAN諸国を含む25ヶ国、地球6.2周分の距離を移動したと報じている。日本とアメリカはこれまでアジアへの関心が低く、そのため多くの国の中国との関係を強める結果になったことを省みて、アジア外交を活発に行っているという。
香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙によると、日本側は今回の会合について、中国を排除しようとするものではないと説明した。しかし、海域問題と中国が設定した防空識別圏については、「必ず話し合うだろう」としている。
テンプル大学(東京)のジェフリー・キングストン教授(アジア研究)は、中国の防空識別圏設定に関して、「中国が議題を提供したようなものだ。中国が見せている領土問題への野心が、アジア地域全体の悩みの種となりつつある」と指摘したという。同氏は「安倍政権の地域外交は、東南アジア諸国への脅威とみられる中国の動きによって、地域の団結力を強化することに焦点をあてている。そして中国は、日本の政策に都合の良い悪役を演じている」とみている。
なおミャンマー政府高官は、このような反中国の動きだとする見方に対し、「中国が参加していないというだけで、今回の会議が中国への対抗を意味するとは思わない」「ASEANは、中国や韓国とも似たような会合を持っている」と発言したという。
【中国のアジア政策】
中国の習近平国家主席は10月、自国の経済発展はアジアにチャンスをもたらすと発言。インドネシアに、282億ドルの投資を約束した、とブルームバーグが報じている。習氏は、中国とASEAN の貿易額は2020年までにと1兆ドルに達するだろうとの予想を示したという。
専門家は「中国は、敵を増やしたいわけではない」「活発な周辺外交は、中国にとって非常に重要だ。アジア太平洋地域でアメリカの展開に対抗したいからだ」と指摘した。
【日中両国と良好な関係を維持したいアジア諸国】
ASEAN諸国は、中国の高圧的な外交政策に不安を見せているが、経済的結び付きを損なうのは嫌っているようだ。安倍政権はこれまで、中国に対抗するためアジア地域での積極的な外交を続けてきたが、南シナ海での問題に関して、アジア諸国の団結を図ることは容易ではない、とウォール・ストリート・ジャーナル紙はみている。例えば、カンボジアは中国の親密な同盟国であり、タイ、インドネシアなども、現在の良好な経済関係を傷つけたくないとの思惑があるからだ。
PHP総合研究所国際戦略研究センターの金子将史氏は、「日本は、中国との関係悪化に不安を抱く国々の、微妙な均衡を考慮しなければならない」と指摘している。
ブルームバーグは、明治大学の関山健特任准教授(国際連携機構)の、「東南アジア諸国の中には、中国との関係が悪化するのを不安に思う国もあり、日本が望むように一致団結することはないだろう」との意見を取り上げている。