【特定秘密保護法】海外紙、アベノミクスで得た支持を利用と報道

 特定秘密保護法が6日の深夜、参議院本会議で可決した。野党側は特別委員会で激しく反対した後、多数の議員が法案を不満とし本会議での採決を欠席。結局自民・公明の賛成多数で秘密保護法は可決、成立した。

 機密情報はこれまで防衛省が扱うものだけとされていたが、今後はすべての省庁が機密指定の範囲に入る。また、機密指定の期間は5年間が基本だが、省庁の判断で延長が可能とされ、内閣が承認すれば30年を超えて秘密とすることができる。

 同法は、政府に広い範囲で機密指定の権限を与え、それを漏らした公務員への罰則を強化するもの。反対する声は強く、安倍内閣の支持率を下げる結果となっている。共同通信社が8,9日に実施した全国緊急電話世論調査によると、支持率は47.6%で、前回11月の調査より10.3ポイント急落したという。なお不支持率は38.4%(前回26.2%)だった。

【アベノミクスで得た支持を利用した、”異例”の早期可決】
 1ヶ月もかからずに法案が可決したのは異例だ、とフィナンシャル・タイムズ紙が報じている。安倍首相以前の5年間、どの政権も力が弱く短命であった。しかし、今回の法案成立により現政権は、強引とも言える政治指導力を行使できることが顕著になったという。この背景として、「アベノミクス」政策で獲得した政治的財産があるためだ、と同紙は指摘している。

 生活の党の小沢一郎代表は、「政府は、国民の不安を和らげたいと思うなら、さらなる議論を続けるべきだ。今回の法案成立は、未熟で傲慢な策だ」と政府のやり方を非難した。

 ニューヨーク・タイムズ紙も、安倍政権が国民の支持を利用し、野党と国民への十分な説明と理解が得られる前に法案を無理やり成立してしまったと報じている。

【言論・報道の自由抑圧への不安】
 安倍首相は、秘密保護法を防衛上必要と主張するが、報道関係者、法律家、人権団体からは強い反対がある、とニューヨーク・タイムズ紙が報じている。反対派は、秘密の指定範囲が曖昧で、官僚の秘密主義をさらに強めるだけだと訴えている。また、強化された罰則が、内部告発者を黙らせ、ジャーナリストの脅威となり、国民の知る権利を侵害することになるのでは、と懸念を示している。

 安倍政権はこのような不安に対し、通常の情報収集活動は違法に当たらないとし、機密情報の扱いを監視する第三者組織を設置するとしている。法案を担当する森まさこ大臣は、「国民の知る権利が守られ、むやみな秘密の指定が行われないよう努めます」と答えた。

 しかし、野党側は政府の約束に不満だ。安倍首相の言う第三者委員会が、実際どのような権限を持つのか不明確で、特に設置された委員会が秘密とされる情報の見直しを求めることができるのか疑問を呈している。

【ノーベル賞受賞らも反対を表明】
 ノーベル賞授賞者の益川敏英氏、白川英樹氏らを含む有識者たち31人が7日、「戦後民主主義への最大の脅威」だとし、秘密保護法案へ反対の立場を表明したとAFP通信が報じている。

 同氏らは、政府が日本国憲法に保証された「基本的人権と平和の原則」を脅かそうとしていると安倍政権を非難した。共同通信によると、3150人を超える学者たちが支持するとしたこの声明では、与党陣営の強引な法案成立の手法は、「戦前の政府が思想と報道の自由を剥奪したことを思い起こさせる」と強い憂慮を示したという。

Text by NewSphere 編集部