「安倍政権は帝国主義に戻るのか?」 英紙が懸念する理由とは
尖閣問題による日中の緊張増加が報じられる中、英ガーディアン紙は、安倍政権の「新ナショナリズム」タカ派路線に注目している。同紙は、戦後の歴史的にもかなり顕著な変化とみているが、日本国民がどう思っているかの測定は困難だ、としている。
【威信拡大に奔走する首相】
安倍首相は就任1年足らずでASEAN全10ヶ国を訪問し、やはり中国との領土紛争に晒されている各国との関係を強化した。米国とも、中国の脅威を念頭に弾道ミサイル防衛、武器開発販売、情報共有、宇宙およびサイバー戦争、合同軍事演習、高度なレーダーや無人機の導入、といった内容の協定に合意している。
国連では「平和への積極的貢献」を掲げ、シリア、核拡散、国連平和維持活動、ソマリアの海賊行為、開発援助、女性の権利に至るまで、広範な諸問題に積極関与する姿勢を見せた。また首相はアベノミクス戦略の出だしの好調に言及して、「日本の成長は世界の利益になります。日本の衰退は、どこの人々にとっても損失になります」などと語っている。
【原点回帰か時代遅れか】
同紙は上記を踏まえ、任期2年目はさらに慌ただしくなると示唆する。首相は平和憲法の改正を望み、防衛費を増額し、新しい国家安全保障戦略、防衛ガイドライン改正、そして国連からさえ批判された「過酷な国家機密法」を打ち出している、と報じている。
同紙が取材した専門家の一人は、これまで日本が平和であったのは平和主義ではなく日米同盟の恩恵であり、「平和のための祈りでは足りないと、人々は認識しているのです」と、政権の路線を擁護した。
一方別の専門家は、日本が尖閣で中国に屈したら中国の「強硬派は勝ち誇り、近代化派や改革派は疎外される」、と危惧する考えではあるものの、「『新ナショナリズム』では成功しません。我々はポスト工業化社会なのです。若者が付いて行くわけがありません」と否定的だ。
【前例に学ぶ領土紛争の畳み方】
また同紙は別のオピニオン記事にて、大戦前のヨーロッパに言及し、日中の軍事衝突を危惧。尖閣問題激化の発端となった昨年の島の買い上げは、「日本の民族主義者の無鉄砲な旗振りスタントに島々が使われるのをやめさせるために行われた」にもかかわらず、緊張が増大していると懸念をあらわにしている。
尖閣に一番近く主張が競合していた台湾と日本は、昨年、主権の問題を避け、漁業の利益を分割する合意を締結して、紛争から抜け出した。同紙は、これは、北海の紛争でも実績のある、紛争から抜け出す「唯一の合理的な方法」だという。記事は「中国と日本の人々は、単純な民族主義のレトリックの音量を下げて実用的な対話を追求する潮時である」と結んでいる。