特定秘密保護法案、衆院通過 アメリカは歓迎、海外メディアは懸念報じる

 特定秘密保護法案が26日、衆議院で賛成多数で承認された。27日の参院本会議で審議に入り、今会期中に成立する見通し。

 法案では、国家機密を漏らした官僚と、それを入手しようとするジャーナリストに、より厳しい処罰を定めている。政府関係者が秘密を漏洩すれば、最長で懲役10年が科される。ジャーナリストが「不適切」あるいは「不正」に情報を入手した場合は最長で懲役5年の刑としている。閣僚と省庁が、防衛、外交、諜報活動、テロ対策などに関連する23項目の情報をほぼ無制限に機密扱いにすることを認めるとしている。

 安倍首相は、「この法律は、国民の安全を守るためのものだ」とし、法案成立後も運用について国会でさらなる議論を重ねることを約束した。

【懸念される国政運営の透明性低下】
 議論の主な争点は、政府がどの情報を機密扱いとするかだ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙が報じている。法案の反対派は、機密指定の過程を監視する独立組織の設置を約束するよう求めていたようだ。

 AP通信は、元内閣官房副長官補(2004~2009年)の柳澤協二氏の、「最も心配なのは、政府が方針を決定する過程がより見えにくくなることだ」との懸念を報じている。同氏は、政府の意思決定過程を確認できないため、「国民が政府に賢明な選択を求めることができなくなる」と語っている。

 さらに、明治大学のローレンス・レペタ教授(政府情報への市民アクセスと政策立案への市民参加に関する研究者)は、法案は報道の自由に対する深刻な脅威だと語り、「安倍政権は、監視を免れるため、いくらでも情報を隠すことができ、政府とその関係者が情報を機密扱いにすることで、これからの法案成立過程の透明性が落ちることになる」と指摘した。

【アメリカは法案を歓迎】
 一方、法案成立の動きをアメリカは歓迎しているようだ。軍事力を強める中国に対抗するため、日本が強い政府となることを望んでいるのだ、とAP通信は報じている。ただ、国際的には、日本政府が言論の自由を統制した、戦前の軍国主義に逆戻りするのではとの不安も強まっている、とも指摘している。

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、アメリカが法案成立により日本を「より強力な同盟国」と評価しているとの、在日米国大使館首席公使のカート・トン氏の発言を報じている。同氏は同時に、成立過程の透明化と、アジア諸国から法案への理解を得るよう求めている。

 法案は、安倍首相がアジア地域の安全保障において、日本の影響力を強めようとする基本的取り組みのひとつだと報じられている。

 またAP通信によると、専門家の多くは、特定秘密保護法案は、安倍首相の望む中央集権的政府をつくるための憲法改正への道ならしともみているようだ。

【残る国民の不安】
 共同通信が23、24日に行った世論調査では、62.9%の有権者が「知る権利」が守られないだろうと不安な見方をしているようだ。法案自体に関しては、45.9%が支持、41.1%が反対であった。日本経済新聞とテレビ東京の調査では、50%が法案反対、26%が支持という結果だった。

Text by NewSphere 編集部