安倍首相、ASEAN訪問で対中包囲網ねらう? 中国紙は「緊張を煽る」と警戒
安倍首相がラオス・カンボジアを訪問したことで、就任後1年弱で日本の首相としては初めて、ASEAN全10ヶ国の訪問を達成した。訪問では道路、橋、鉄道インフラの資金援助などが合意された。
海外紙は、日本と中国の対立関係に着目して報じている。
【安倍首相、中国にNOと言える同盟を目指す?】
安倍首相は、日本と同様に中国との領土摩擦を抱えている東南アジア諸国との関係強化を重視してきた。ビジネスウィークは、「安倍、中国へNOと言うアジアの同盟国を探す」と題した記事を掲載。
一方、中国の英字新聞チャイナ・デイリーは、「北京を狙ったASEAN電撃戦に奔走する安倍」と批判的だ。同紙は、日本が「地域で人気を得るため」に南シナ海の緊張を煽っている、という中国の専門家の分析を報じている。
ビジネスウィークによると、フィリピンを筆頭に、ASEAN諸国は日本の支援を歓迎する姿勢のようである。フィリピンの台風30号被害復興支援に、中国が10万ドル(のち160万ドルに増額)しか提供せず、顰蹙を買ったことも追い風になっているという(日本は1000万ドル、米国は2000万ドル、オーストラリアは2800万ドルの支援を表明している)。
【根強い日中衝突への懸念 ただし安倍首相の戦略変化への評価もみられる】
日本と中国の間では、18ヶ月間首脳会談が開かれていない。こうした状況に対し、フィナンシャル・タイムズ紙のギデオン・リッチマン氏は、日中の偶発的な衝突に警鐘を鳴らした。
同氏は、尖閣諸島をめぐり、「中国も日本も、実際に戦争を望んでいるとは信じ難い」にも関わらず、「両国政府が自らのナショナリスト的レトリックに捕まって、非常に降りづらくなること」を懸念している。日本の国家安全保障会議(NSC)の発足を目指す動きに平行して、中国でも同様の機能を持つ「国家安全委員会」が新設されること、両国指導者層のナショナリスティックな発言などを懸念の背景として挙げている。
一方ブルームバーグは、首相は1期目の反省を踏まえてあからさまなナショナリスト路線を自制していると報じた。その甲斐あって、対中貿易は昨年の暴動による落ち込みから回復しているという。
実際、10月の中国におけるホンダの売上高は前年比3倍以上、日産は78%、トヨタは81%の成長を記録している。日本への中国人観光客も増加に転じ、東京のサンシャインシティプリンスホテルは、10月に中国客が7倍に増加したという。