消費税増税は正解? 海外紙が評価する理由

 安倍首相は1日、来年4月からの消費税8%への増税を承認した。景気回復への悪影響が懸念されるのに対し、政府は、5兆円規模とされる景気刺激策を約束している。さらに、企業の設備投資などへの減税や、人件費を増やす企業への減税(条件の緩和)も表明している。

【日本、消費税が最大税収源に】
 ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、税率自体はさほどでもないものの、増税によって日本はG7諸国中唯一、所得税や法人税ではなく消費税を最大税収源とする国になると報じた。過去10年の平均で消費税収入は約10兆円+増税で7.5兆円増収予定なのに対し、所得税は14兆円、法人税は9.5兆円だという。

 同紙は、消費税のメリットとして、他の税金に比べ、世代間でより均等に税負担を広げることと指摘。高齢化の進む日本では、60歳以上の人々が家計金融資産の60%を保持しており、高齢者世帯の消費は今年101兆円を超える。

 もう一つのメリットとして、景気が後退すれば所得や法人税収も減少するが、消費税は比較的アテにすることができる。

 同紙は、高齢化社会でこそ、消費税は「安定した税収」として重要という、エコノミストの意見を紹介した。そのうえで、同様の課題に直面する他の先進諸国も、いずれ後を追うことになるため、日本はその先駆例として注目されるべき、と評価する姿勢のようだ。

【「アベゲドン」の脅威】
 一方、ブルームバーグのペセク氏は、消費税増税に対し、前回1997年に消費税を上げて不況を招いた橋本龍太郎首相の二の舞になるだけだと批判した。橋本元首相はタイミングの悪い財政引き締めで10年ぶりの景気回復をフイにしており、1929年の世界恐慌時に同様の失策をした米大統領にならって、「日本のハーバート・フーバー」と呼ばれているという。

 問題は、増税に踏み切れた理由だと言う現在のインフレ傾向が、単に燃料輸入コスト増によるものであって、このままでは成長がないのに物価が上がるスタグフレーションの危険があることだ。言わばアベノミクスならぬ「アベゲドン」の脅威だと、記事は警告している。

 真のリスクとは、「上がったエネルギーコストが企業を圧迫する一方で、増税が日本人に支出を思いとどまらせること」であり、増税しておきながらアベノミクスによる経済牽引や景気悪化対策支出を試みることにも疑問を呈している。

 同氏は、政治家はこの2年間、税の上げ方などではなく構造改革を議論すべきだったのであって、そうしていれば今消費者に負担をかける事になってはいなかった、増税開始までのあと半年間それをせよ、と主張する。改革内容としては起業支援、TPP、エネルギー政策、女性役員登用などに言及している。

Text by NewSphere 編集部