対シリア政策 プーチンがオバマを出し抜いた経緯とは
12日、ケリー米国防長官とラブロフ露外相はシリアの化学兵器問題について、ジュネーブで会談を開始した。会談は13、14日にも続くとみられている。
【意見の合わない共同会見】
シリアのアサド大統領は化学兵器および関連施設を国際的管理下に移し、最終的には解体する条約について、批准を示唆している。これに対し米国は、武力による圧力を掛けなければアサド政権が約束を履行するかどうか疑わしいと主張、一方でロシアは、武力を持ち込んだ場合こそ合意が困難になると反対している。
ニューヨーク・タイムズ紙はこの日の、両者の主張が一致していない共同会見の様子を伝えた。最後にはラブロフ外相がケリー長官の声明の冗長さを指摘、ケリー長官もラブロフ外相の発言の一部が初耳だとして通訳に確認を求め、「そのお言葉を額面通りに受け取って欲しいですか?それには少しばかり早いようですが」などと発言するなど、相互の不信感が目立った。同紙は会場のホテルが2009年、当時のヒラリー・クリントン国務長官がロシアとの関係改善努力を演出して、やはりラブロフ氏に「赤いリセットボタン」を見せたのと同じホテルだと、皮肉にも指摘している。
【大胆なプーチン外交に遅れを取る米国】
プーチン露大統領は同日同紙の記事に寄稿して、武力行使はシリア外に紛争を広め、国際法違反となり、戦後の安定を損なうと主張した。また、8月21日の化学兵器攻撃は政権側ではなく反乱側によるものだとも述べている。プーチン大統領は「我々は肉体言語の使用をやめ、文明化された外交的・政治的和解の道に戻らなければなりません」と述べ、さらに10日オバマ大統領が米国は例外だと語ったことに対して、「動機に関わらず、人々に自らの例外視を奨励するなどは、危険極まりないことです」と批判した。
プーチン大統領は11日にも、先週ケリー長官がシリア反乱軍はアルカイダと繋がってはいないと議会証言したことについて、「彼は嘘をついています。彼も嘘だと知っている。悲しいことです」と言い切っている。
同紙はロシアが、軍事介入を否決した英国などと米国の不一致を利用して、シリア紛争への対処にあたり不可欠と目されることに成功し、拒否権を発動できる国連安保理に議論の主導権を戻し得たとして、米国を出し抜くに至っていると評した。
また、プーチン大統領がシリアに肩入れするのはシリアを守る必要性からでも、米国の横暴を阻止するためでもなく、単純に反米感情ゆえであり、「明らかに信用していない米大統領に、自分で作った政治・外交的危機の出口を与えてやった」満足感で、現在は得意の絶頂にあるはずだと論じている。