日本、モンゴルとの関係強化のねらいとは?

日本、モンゴルとの関係強化のねらいとは? 安倍首相は30日、モンゴルを訪れ、アルタンホヤグ首相やエルベグドルジ大統領と会談した。資源開発など、新たな経済協力の枠組みである「エルチ・イニシアチブ」に合意した。また会談では、中国との領土問題や、挑発を続ける北朝鮮への対応についても話し合われた模様だ。なお、日本国首相のモンゴル訪問は、2006年の小泉氏以来7年ぶりとなる。
 海外紙は、安倍首相のねらいは、モンゴルの豊富な資源と中国への牽制であるとみている。

【日本のねらい:モンゴルの資源】
 日本は、2011年の津波による原発事故の影響でほとんどの原発が停止しており、火力発電の燃料需要が高まり、その安定的な確保は大きな課題だ。モンゴルは石炭をはじめ、ウランやレアアースなどの資源も豊富だ。今回の会談でも、安倍首相が最も時間を割いたのは、世界有数と言われるタバン・トルゴイ炭田開発への日本企業の参加だったと報じられている。
 エルチ・イニシアチブでは、資源開発に向けて日本の投資を促すとともに、モンゴルの持続的経済発展のため、日本が大気汚染対策などに関して技術協力を行うとしている。さらに、火力発電所改修で約42億円の円借款を供与することでも合意した。
 安倍首相は共同記者会見で、「日本は資源が豊かではないが、高い技術力がある。そのため協力関係は両国にとって非常に有益だ」と安倍氏は述べたという。

【日本のねらい:中国への牽制】
 中国への対応は、資源の確保と並び、安倍新政権の外交面での最重要課題の1つだとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。同紙は、安倍首相がアジア諸国を訪れて関係を深め、民主主義を軸とした連携の構想を示すことは、言葉に出さないものの、明らかに中国に対抗しようとするものだという。実際、首相はモンゴルに対しても、「自由と民主主義という価値を共有するパートナー」という表現を用いている。
 中国との尖閣諸島をめぐる問題に関して、安倍首相は、「日本の立場への理解が得られた」と述べた一方、「モンゴルの立場は理解している」と配慮も示したとグローバル・ポスト紙が報じている。現在中国はモンゴルの最大の貿易相手国であり、投資国でもある(海外援助国としては日本が最大)。
 菅内閣官房長官は、1月の東南アジア諸国も含め、安倍首相の一連の外遊は「反中国」を意味するのではないと述べている。なお安倍首相は2月に訪米し、5月にはロシア訪問も計画されているが、中国訪問の予定はないようだとウォール・ストリート・ジャーナル紙は報じている。

【モンゴルのねらい】
 モンゴルは国境を中国、ロシアという大国と接している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば、モンゴルは両国からの圧力をかわすため、また内陸国のため、日本を「第三の隣人」として関係強化を進めたい意向だという。

Text by NewSphere 編集部