中国機、領空侵犯-ねらいと今後の対策は?
13日11時6分頃、中国のプロペラ航空機が尖閣諸島上空の日本領空を侵犯した。中国による日本の領空侵犯は、記録が残るかぎり初めて。海上保安庁の巡視船が発見し、即時退去を求めたところ、「ここは中国の領空だ」という返答があったという。
海上保安庁の連絡を受け、政府は、航空自衛隊のF-15戦闘機を緊急発進させたが、到着したときにはすでに、中国機の姿はなかったという。自衛隊のレーダーが領空侵犯を探知できなかったことについて、藤村官房長官は、「(設置されたレーダーから尖閣まで遠いため)探知は困難」と認めた。低空・低速での飛行はレーダー捕捉が極めて困難という指摘もある。
事態を受け、藤村官房長官は「極めて遺憾」との声明を発表した。中国側は、「中国の航空機が中国の領空を通過するのは、ごく当然のこと」と応酬した。
海外各紙は極東の火種について、中国の強権的姿勢、日本の総選挙の行方、アメリカの態度を中心に報じた。
フィナンシャル・タイムズ紙は、今回の領空侵犯が、南京大虐殺75周年式典と足並みを揃えて強行されたことに着目。人民の愛国心をかきたて、国威を発揚する中国の狙いを示唆した。同国の識者は、政府が「中国機が中国の領空を飛ぶのは当然」というスタンスを鮮明にしたことから、今後も同様の行為が繰り返される可能性が高いと指摘。折しも、習近平新国家主席は「強い中国の再興」を訴え、そのためには「豊かな国家と強大な軍事力」が必要だと表明している。しかも、中国がこの1カ月に、監視船のみならず、軍艦を2度までも尖閣諸島の周辺に送り込んでおり、日本は神経を尖らせているとした。
この点につき、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、領海は「害意のない航行」については咎められないのに対し、領空は侵入即ち侵犯であり、国際法上、即時実力行使による排除が認められるという明確な違いを紹介。事態の深刻さを浮き彫りにした。
また各紙は、総選挙を数日後に控える日本の政情に言及した。「尖閣問題」は選挙の争点の一つ。今回、領空侵犯を探知できずに対応が後手に回ったことは、ただでさえ劣勢が伝えられる与党、民主党への追い打ちになるとした。各種調査が確実視する「自民党圧勝」という結果が現実となれば、ナショナリストで知られ、政権奪取後には、軍事費の増強と対外姿勢の強硬化を宣言している安倍総裁が国を率いることになると指摘。そうなれば、両国間の緊張はさらに高まらざるを得ないとした。
では、アメリカの反応はどうか。ニューヨーク・タイムズ紙によれば、キャンベル国務次官補は、「日本に管轄権があるが、主権争議では中立を保つ」という立場を再確認したうえで、関係諸国が誤解や緊張を招く行動を自制し、領土問題を平和的に解決することを求めた。なおオバマ政権は、「尖閣諸島は日米安保条約の共同防衛の範囲内にある」と明確にしている。
ニューヨーク・タイムズ紙は、中国と周辺各国との領土争いのなかで、アナリストが最も危険視するのは、「最も洗練された海軍力を保有する」強国、日本との尖閣問題だと報じ、今後の注目度の高さを浮き彫りにした。