1兆円かけた衛星監視網、各紙が指摘する課題とは?
27日午後1時40分、政府の情報収集衛星「レーダー4号機」を載せたH2Aロケット22号機が種子島宇宙センターから打ち上げられた。衛星は予定の軌道に入り、打ち上げは成功した。
情報収集衛星は、夜間や悪天候でも、電波を使って地上の様子を撮影できる「レーダー衛星」で、事実上の偵察衛星といえる。稼働中のレーダー衛星1基と光学衛星 3基と連動し、地球上のどの地点も1日1回以上監視できるようになる。98年の北朝鮮のミサイル発射がきっかけとなり決まった衛星の運用は、10年遅れで完成することになる。
各紙はそれぞれの視点からこの話題を報じた。
朝日新聞は、紙面での扱いはあまり大きくないが、デジタル版では、記者会見の内容も含め詳しく報じている。特にコストと情報公開に着目した。コストについてはまず、今回の開発・打ち上げに470億円、衛星4基の本格運用に約9000億円かかっていることを指摘した。情報公開のあり方については、記者会見でのやり取りを掲載。衛星の運用を担当する内閣衛星情報センターの下平所長の回答として、大規模災害などに関しては収集情報を各省庁・自治体に配布することもあるが、情報の保全と国民への提供とのバランスを鑑み「ケースバイケースでやる」とされていることを報じた。
読売新聞は、28日付朝刊1面で大きく取り上げた。「1日1回であっても、常に他国の情報を入手できる手段ができた意義は大きい」という専門家の評価を紹介する一方、3つの課題を指摘した。まず物体を識別する機能だ。米国の偵察衛星や民間衛星に劣り、“米国と比べ「人間の視力で言えば2・0と0・3ぐらいの能力差がある」(内閣官房幹部)”と評されていることを報じた。次に監視網を維持していくコストだ。運用中の衛星は5年の寿命を超えていることを指摘した上で、民間に移管された打ち上げを確実に続けていくことが必須とした。最後に重要情報を見極め分析する人材育成の必要性についても言及した。
産経新聞は、コスト面の課題を指摘したうえで、情報開示努力が必要という主張を展開した。記事によると、予算は累計9800億円に膨らみ、今後も1基あたりの開発・打ち上げに400~600億円かかるという。「北朝鮮を監視するための性能は十分な水準に達しつつある」という専門家の意見も紹介思あえで、分析力や運用効率改善も必要と論じた。情報公開についても、特性上一定の制約が止むを得ないとはしたうえで、相次ぐ故障やメーカーの過大請求問題などをうやむやにするのではなく、国民の信頼を得る努力をしなければならないと論じた。