“鉄人”アームストロング選手、ドーピング疑惑で告発

アームストロング 10日、米国反ドーピング機関(USADA) は、自転車競技の元選手ランス・アームストロング氏を、極めて多様なドーピングを長期に渡って主導してきたとして告発する報告書を公表した。

<挫折と栄光>
 アームストロング氏は、デビュー後の1996年にガンが発覚、闘病生活を送っていた。そこから復活を果たし、ツール・ド・フランスで前人未到の7年連続総合優勝(1999~2005年)を成し遂げた。一度現役を引退したが、その後復帰を果たした。ガン撲滅のためのLIVESTRONGプロジェクトを設立し、累計4.7億ドルの基金を集めたとFinancial Timesは報じている。

<これまでの経緯>
 アームストロング氏は2001年以来、長期に渡ってドーピング疑惑を指摘されてきたが、常に否定してきた。しかし、氏が信頼を寄せていたチームメイトから多数の証言がなされたことから状況が変わる。6月、USADAはアームストロングに対し正式にドーピング違反であるとの判定を下した。8月、アームストロング氏側は、「これは魔女狩りだ」と強く反発し、制裁受け入れも異議申し立てもしないとした。USADA は、アームストロング氏がチームにおけるドーピングの中心的な役割を担っていたと認定し、競技の参加禁止を命じるとともに、7度に及ぶツール・ド・フランス総合優勝の名誉をはく奪するとした。

<生々しい証言の数々>
 今回の報告書では、アームストロング氏の複数のチームメイトが、氏のドーピング関与について詳細に証言している。それらによると、氏は自らドーピングに手を染めるだけではなく、チームメイトにも強要したとされる。The Wall Street Journalは、自転車競技におけるドーピング問題は非常に根深く、どのチームもやっているのではないかと思うほどだったという趣旨の元チームメイトのコメントを報じた。
 さらに、EPO (禁止ドーピング用造血剤) の貸し借りも行われていたとのことだ。また医師の指導のもと、ドーピングテストをかいくぐる様々な方法が実践されていたようだ。たとえば、抜き打ち試験を行う者が訪問しない夜に薬物を摂取すること、医師に仮病を処方してもらうことによって禁止薬物を摂取しやすくすること、皮下注射ではなく静脈注射を行うことなどである。

<今後の動き>
 調査を終えた USADA は、ドーピングが普通に行われているスポーツ文化を変えることが最終的な目標であるとしている。なお、国際自転車競技連合は、USADA に対してアームストロング氏に対する処分についての説明を求めている。USADA の報告書と証拠は、国際自転車競技連合ならびに国際的な反ドーピング団体に送付されることになっている。

Text by NewSphere 編集部