クロマグロの惨状を見ていない? 初競りの熱気に海外から冷たい視線 日本の姿勢に批判集中

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クロマグロの惨状を見ていない? 初競りの熱気に海外から冷たい視線 日本の姿勢に批判集中

 5日、マグロの初競りが築地市場で行われ、青森県大間産のクロマグロ(212キロ)が7420万円で競り落とされた。日本国内では新春恒例の明るい行事として報道されているが、このままでは絶滅するといわれるクロマグロの保護に、本気で取り組む気のない日本を象徴するニュースだと、海外メディアが冷たい視線を投げかけている。

◆おめでたいのは日本だけ? クロマグロは激減中
 今年の初競りで最高値のクロマグロを競り落としたのは、すしチェーン「すしざんまい」を運営する喜代村で、6年連続となった。7420万円という額は、1億5540万円の史上最高値となった2013年以来の高値で、落札した巨大なマグロを前にポーズを取る木村社長の写真が大きく報じられるのも恒例となった感がある。

 海外メディアの報道は、お正月ムードや築地の移転問題などと絡めて伝えた日経、朝日などの国内メディアのものとは対照的だ。フィナンシャル・タイムズ紙は、築地の初競りは商人がその浪費ぶりを示し、競りの主導権を握り、人目を引くチャンスを捕えようとする恒例の行事と解説しつつ、高値が強調するのは、今年の日本経済の見通しに関して広がる楽観論と、乱獲されたクロマグロの高まる希少性だとしている。ガーディアン紙も、「日本やその他の国々による数十年にわたる乱獲で、マグロが絶滅の危機に瀕するなかでの」高値と述べており、初競り自体は参加する飲食店の宣伝活動の一環だと冷やかに見ている。

◆マグロは絶滅する? もっとも効果的なのは禁漁
 非営利非政府組織The Pew Charitable Trustsでマグロ保護活動を指揮するアマンダ・ニクソン氏は、マグロの競りが広く公開され、メディアが報じることで、97%以上が取りつくされてしまったという太平洋クロマグロの惨状が見えなくなりがちだと述べる。同団体のジェイミー・ギボン氏によれば、繁殖の準備が出来ていない3歳未満で捕獲される太平洋クロマグロは全体の95%にもなり、西太平洋で捕獲されるクロマグロの大多数が日本の領海で取られたものだと指摘する。同氏は、日本が国際的なマグロの漁獲量削減の動きを阻止する主要国だと述べている(FT)。

 The Pew Charitable Trustsは、昨年7月に太平洋クロマグロの商業的な捕獲を2年間禁止することを提案。これにより乱獲が止まり、管轄するかつお・まぐろ類の地域漁業管理機関(RFMO)が、禁漁期間の間に健全なレベルにまで資源を回復させる策を講じることができると主張した。この提案に賛同するNGOや市民の活動は広がり、資源保護の機運は高まったものの、RFMOである中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)の12月の会合では、太平洋クロマグロを保護するための画期的対策は取られなかった。ニクソン氏は、このまま十分な対策が取られなければ、いずれマグロ漁自体が不可能になるとし、日本や他の漁業国が主導して資源保護に動く必要があると述べている。

◆持続可能な漁業へ。マグロ問題は我々の文化や生存に直結
 WCPFCは、30キロ未満のクロマグロの漁獲量を2002年~2004年の漁獲量の平均の半分とすることを2015年に決定しているが、このペースでも将来的には商業的に持続不可能になるとギボン氏は指摘する。また、日本の関係者は、漁獲制限は漁業者への負担が大きすぎると言い続けるが、長期の資源保護より目先の利益が優先されてしまっていると同氏は批判する(ガーディアン紙)。

 ニューヨーク・タイムズ紙に意見を寄せた、オレゴン州立大学の海洋生態学者、ジェーン・ルブチェンコ氏と環境保護団体「Nature Conservancy」の理事、マリア・ダマナキ氏は、乱獲で激減していた大西洋クロマグロの個体数が、関係国の努力によって回復してきていることを紹介し、太平洋地域とは対照的だと述べる。太平洋では状況はもっと悪化しているのに、近視眼的な国益のために主要漁業国が責任を担うことをせず、資源回復のための大胆な策を取ることに消極的だ、と辛口だ。

 両氏は、海洋環境を壊すことは人間自身の生存への脅威となると指摘。食物連鎖の頂点捕食者であるクロマグロの乱獲は漁業への打撃になるばかりではなく、どのように分相応の生活をして増え続ける人口を養うのか、どうすれば地球上の他の生き物とうまく共存できるのか、どうすれば持続可能な環境を次の世代に残せるのかという、人類へのより大きな問題提起になるとする。

 世界のクロマグロの多くは日本で消費されており、日本食人気も手伝って、中国など他国での消費も伸びている。マグロのすしや刺身は、日本が世界に誇る食文化だ。これを守り、次の世代に受け継ぐためにも、我々消費者も食べるだけではなく、マグロの資源管理や保護に関心を持つべきだろう。

(山川真智子)

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