ネットに氾濫する「嘘ニュース」 騙されて拡散しないために注意すべきことは?
Facebookの「ニュースフィード」に事実無根の情報が記述されていたことが問題となっている。「ローマ教皇がトランプ候補を推薦」など米大統領選にも影響を及ぼしたとされる。米国の各有力紙はこの偽ニュース問題をさまざまに取り上げた。
◆どこまで影響力があると評価できるのか
調査会社のPew Research Centerによると、アメリカ人成人の62%がソーシャルメディアからニュースを得ている。reddit(ソーシャルニュースサイト)の70%に続き、Facebookユーザーの66%が同サイトからニュースを入手しており、Twitterなど他のSNSに比べ高い結果となった。先の大統領選で偽ニュースが投票に影響したと考えられる理由だ。
◆目的はなにか、トランプ氏支持?
Interactive Advertising Bureauのレポートによると、2015年米国のインターネット広告収入は10年間の平均成長率で17%増、中でもモバイル系の収入は毎年倍増で成長している。PV(ページビュー)で収入が決まるインターネット広告で稼ぐには、センセーショナルな情報をいかに発信できるか。米大統領選のように世界が注目するイベントでは、情報によってはまたたくまに各国に広がりPVを稼げる。そこでニュースのねつ造となるわけだ。偽ニュースを流す目的はイデオロギーよりも、多くは広告収入というビジネスのためなのだ。
正規のニュースと偽ニュースのシェア数を比較すると、Facebookの広告収入の半分が偽ニュースからと推定できなくもない。ニュースの真偽は配信元の問題であるとしてFacebookはポリシーとしてそこへの立ち入りを拒んできたが、自社の利益のためと見ることもできてしまう(フォーブス)。
◆PV稼ぎは利用者の拡散がたより
ハフィントンポストでは信ぴょう性に乏しいニュースは、インターネットの時代になって発生したわけではなく、昔から問題視されてきたとする。インターネットでは読者がその偽ニュースを信じ友人にシェアすることで、強力なウイルスのように広がることができる。多くの人間に共有(「いいね」やフォロー)されることで、ウソも真実に見えてしまう。そこに問題の核心あるという指摘だ。
◆ネット上のウソの見分け方
Googleに続きFacebookも偽ニュースの配信には広告の利用を制限すると発表した。しかし、偽ニュースや信ぴょう性の乏しい情報が根絶されるわけではない。重要なのは読者一人ひとりが情報の真偽を見極めること。USA TODAY Collegeでは、若い人向けに友人知人へシェアする前の7つのチェック項目を推奨している。
1.投稿日、いつの出来事か確認する。再編集の可能性を考える。
2.発信元の他の記事を確認する。
3.サイトデザインやドメイン、免責事項や著作権の記述など、サイトをよく確認する。
4.事実確認のサイトで情報の真偽を確認する。
5.信頼できる大手メディアのサイトで同じ事件・事象が扱われているか確認する。
6.類似画像検索サービスで記事の写真と似た写真の記事を検索する。
7.ユーモアにあふれ、欲求充足や親近感に富む記事こそ注意。
◆米国だけの問題ではない
日本でも11月、男児の心臓移植の募金サイトが虚偽だったという出来事があった。記者会見まで開いたことで通報により発覚した。ネット上だけなら拡散し、大きな事件になっていたかもしれない。
日本のインターネット普及率は個人レベルで80%を超えている(総務省「通信利用動向調」)。メディアのほかブログやSNSで個人も発信している。拡散力を考えれば、もはやメディアは読者である私たち一人ひとりにも責任のある時代になった。ネット先進国である米国の各紙は、その点に警鐘を鳴らしているのだ。