“歴史的”訪日客が出国者を逆転、上半期914万人 京都は2年連続世界一の観光都市に

 日本を訪れた外国人観光客数が、大阪万博があった1970年以来初めて、日本からの海外旅行者数を上回った。日本政府観光局(JNTO)が22日に発表した統計によると、今年上半期(1〜6月)に日本を訪れた旅行者数は、前年同期比46%増の914万人。反対に海外旅行に出た日本人は約760万人だった。英フィナンシャル・タイムズ紙は、これを歴史的な出来事として報じている。また、米旅行誌『Travel+Leisure』は、読者投票で京都を2年連続で「世界で最も魅力的な観光都市」に選んだ。

◆中国人観光客は2倍超
 日本の旅行者数の「IN」が「OUT」を上回ったのは、例外的に訪日客が急増した万博イヤーの1970年以来初めてだ。その後は高度成長期、バブル期を経て日本人旅行者が世界中の観光地を席巻し、その数を訪日客数が上回ることはなかった。

 下半期も訪日客の増加傾向は続くと見られており、今年の年間観光客数は過去最多の1800万人に達する見込みだ。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)の日本関連ブログ「Japan Realtime」は、「日本を訪れる外国人観光客数は昨年、過去最高の1340万人に達したが、この記録は短命に終わるだろう」と記している。

 政府は、増加要因に「円安」「ビザの緩和」「アジア諸国の可処分所得所有層の増加」を挙げている。最多は中国人観光客の220万人で、昨年同期の2倍を超えた。ほかにアメリカ、韓国、台湾、オーストラリアなど19ヶ国からの観光客数が過去最多を記録した。また、JNTOは、東京、大阪などの主要都市以外を訪れる観光客も増えているとし、台北と岩手県花巻、中国河南省鄭州と静岡を結ぶ航空路線などが拡大していることを例に挙げた(WSJ「Japan Realtime」)。

◆「歴史的境界点」を超えた
 FTは、日本を出入りする観光客の流れが逆転したことを「歴史的な境界点を超えた」と強調している。同紙は、東京オリンピックが開かれる2020年までに年間観光客数を2000万人に増やすというアベノミクスが掲げる目標が、「達成可能なコースに乗った」と記す。また、中国人観光客の“爆買い”がアベノミクスの経済再生を強く後押ししているとも記し、円安やビザ緩和政策も効果が高かったと見ている。

 ただし、中国人観光客の急増傾向は、今後はゆるやかになると見られている。今年5月以降の韓国での中東呼吸器症候群(MERS)の感染拡大により、韓国旅行を予定していた中国人の多くが日本に行き先を変更したというデータがあり、感染の収束に伴い再び韓国に分散すると見られているからだ。

 それでも、日本の観光・小売業界の中国人観光客への期待は大きい。例えば、日本全国で免税ショッピングができるデパート、ドラッグストア、コンビニなどが急増している。今年4月の時点で、免税店の数は前年の3倍以上の約19,000店舗に拡大した(FT)。その“爆買い”の対象の一つが、市販の医薬品だ。中国人観光客は日本製の市販薬の一部を「神薬」と呼び、12品目ほどが人気を集めている。その筆頭に挙げられるのがピンク色の目薬「ボーティエ」(参天製薬)だ。同社は、「需要に応えるためにできることは何でもします」とFTに答えている。

◆旅慣れた読者が選んだ「京都」
 一方、欧米人観光客に人気があるのは、京都をはじめとする日本文化を堪能できる歴史的なスポットのようだ。米旅行誌『Travel+Leisure』の読者投票による「魅力的な観光都市」年間ランキングに、京都が2年連続で1位に選ばれた。英デイリー・メール紙は「京都の庭園は日本体験の真髄と言われ、ユニークで繊細な美を提供する。注目に値する神社仏閣、独特の食文化、芸者との遭遇の可能性も得票に貢献した」と記す。

『Travel+Leisure』のネイサン・ランプ編集長は、20年目となった今回の読者投票で京都が1位になったことについて、次のようにコメントしている。「本誌の読者は世界中を旅しており、要求レベルも非常に高い。その中で、京都は素晴らしい景色や豊かな文化、多種にわたる食の楽しみなど、非常に多くのものを提供できる旅行先として際立っており、90点を超える高得点を獲得した。京都が最高の体験をできる場所であることは、疑う余地がない」

 ちなみに、2位は僅差で米サウスカロライナ州の歴史ある港湾都市、チャールストン。3位はカンボジアのアンコール遺跡群の観光拠点シェムリアップだった。全体的に通好みのランキングとなっているようだ。

Text by 内村 浩介