“もっとも過小評価された廃墟”東北の遊園地跡地、観光スポットに 英紙紹介
かつては絶好調だった日本経済。その右肩上がりの成長期に作られた、多くの住宅や施設が、現在使われぬまま放置されている。バブル崩壊後の不景気、少子高齢化による人口減少でお荷物となったこれらの負の遺産は、今後どうなっていくのか?海外メディアが注目した、3つの事例を紹介する。
◆廃虚と化し、静かな人気に
英デイリー・メール紙は、東北の化女沼(けじょぬま)レジャーランドに注目。1979年に開園し、遊園地、キャンプサイト、ゴルフ練習場を備え、かつては年間20万人もの来園者でにぎわったテーマパークが、出生率低下と景気の低迷で2000年に閉園し、廃虚と化したと説明する。
今では、伸び放題の雑草の中に埋もれた、さびた観覧車やメリーゴーランド自体が人気を呼んでおり、多くの写真家が、撮影のためにここを訪れるという。都市探検家で写真家のフロリアン・セイデル氏は、「自分が今まで訪れたなかでもっとも過小評価されている廃虚だ」と絶賛。「すべてが閉園当時のまま自然に朽ち果てており、故意に破壊された形跡がない」、「公道に面しているのに、まるで時間に忘れ去られたかのよう」と、その魅力を説明する(デイリー・メール紙)。
地元紙「河北新報」によれば、化女沼レジャーランドの社長は、「化女沼を一大観光地に」という夢を継ぐ人が現れるのを待っているという。そのため土地や施設は、切り売りせず残しているとのことだ。
◆空き家でゴーストタウンに
ブルームバーグは、人口減少が深刻な日本では、一部地域は今後20年以内にゴーストタウン化するだろうと報じている。すでに日本の空き家は800万戸以上。野村総合研究所は、その数は2033年までに2,150万戸となり、住宅ストックの約3分の1が空き家になると予測している(ブルームバーグ)。
ブルームバーグは、日本の空き家の問題点として人口構成の変化を挙げるが、建築慣行や新築嗜好が、さらに問題を悪化させていると指摘。国税庁によれば、日本の住宅市場の半数以上を占める木造住宅は22年後、コンクリートの集合住宅でも47年後には無価値となり、多くの住宅は耐久性を考えて建てられていないと説明する。そのため、中古住宅の販売は振るわず、取引全体のわずか15%ほど。ちなみにアメリカでは90%近くが中古物件の取引だ。野村総合研究所の榊原渉氏は、空き家対策には、中古市場の開拓が重要だと述べる(ブルームバーグ)。
空き家問題への対策として、今年から「空き家対策特別措置法」が施行。自治体が老朽化し危険と認定した空き家は、固定資産税軽減措置の対象外となるため、取り壊しが進むことが期待されている。
◆広い土地を有効利用
一方、負の遺産を、うまく活用できた例も紹介されている。好景気の時代、日本では全国にたくさんのゴルフ場が作られた。しかし、バブル崩壊でゴルフ人気は下降。莫大な維持費も経営の負担となり、多くが使われず放置されてきた(ビジネス・インサイダー誌、英インディペンデント紙)。
そんな見捨てられたゴルフ場に目をつけたのが、京セラだ。同社は、日当たりの良い広大なゴルフ場の土地が太陽光発電に適していると判断。京都の元ゴルフ場に23メガワットのソーラー・プラントを建設し、2017年には8100世帯分の電力の発電を目指す。すでに2つ目も、鹿児島県で計画中だ(ビジネス・インサイダー誌)。
インディペンデント紙は、この方式は、他の国々でも取り入れられていると述べ、ゴルフ人気に陰りが見えるアメリカでも、使われないコースの有効利用に役立つとしている。