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「たまは神になる」世界が駅長の死を報道 広がる日本の猫文化、強力な観光資源に

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「たまは神になる」世界が駅長の死を報道 広がる日本の猫文化、強力な観光資源に

 経営難にあえぐ一地方鉄道を救った三毛猫のたま駅長の死のニュースは、世界中を駆け巡った。欧米の名立たるメディアが、「たまは今後、神社に祀られて神になる」と報じた。「招き猫」「猫カフェ」など、日本人は独特な「猫とのふれあい方」の文化があり、今年春には瀬戸内の小島が「猫の島」としてロイターに報じられ、「猫を眺めるツーリズム」が新たに生まれつつある。日本発の猫文化が、欧米を主として徐々に広がっている。

◆世界のメディアがたま駅長の訃報を伝える◆
 和歌山電鉄貴志川線貴志駅のたま駅長が6月22日、心疾患で16歳(人間なら80歳)の生を閉じたという知らせは、またたく間に世界中を駆け巡った。24日に新華社や聯合など中国・韓国のメディアが報じると、翌25日にはBBC(英)やCNN(米)などのテレビニュース、AP通信やAFPなどのニュース配信、さらに京郷新聞(韓)、デイリーメール(英)、ウォールストリートジャーナル(米)、リベラシオン(仏)、ツァイト(独)、ラヴォス(西)、ニューデリーTVニュース(印)など、世界各地の有力メディアがたま駅長の死を報じた。その後も、ガーディアン(英)、ニューヨークタイムズ、ワシントンポスト(米)、ABCニュース(豪)など錚々たるメディアが、28日の葬儀の様子も交えて大きく報じた。

 その内容を少しご紹介しよう。経営危機に瀕していた和歌山電鉄の小島社長がたまを貴志駅長に任じたのは、駅で飼う方便であったと明かした後、「しかし彼女は本当にその仕事をした」(ガーディアン6月29日)。改札口で乗客を出迎えたり、ホームを巡回したりする姿が次第に人気を集め、乗客増やグッズ販売などに発展し、経営を立て直しただけでなく、地域経済への「たま効果」は10億円以上に昇った。「これらを彼女は、ニャーという以外の言葉を発することなく、すべてやりとげた」(ニューヨークタイムズ6月28日)。28日の社葬で述べられた、和歌山県の二坂義信知事の、「わが県への観光促進に貢献した日本内外で大人気のツーリズムのスーパースター」のたまを失い「深い悲しみと感謝でいっぱいです」という声明や、小島社長の「和歌山電鉄だけでなく、全国の地方鉄道の救世主としてこの世界に現れたたまと働いたことを、誇りに思う」「たまを名誉永世駅長に任じます」という弔辞も紹介している(ワシントンポスト6月29日)。また、神道式で行われた葬儀について、「たまは女神になった。神道には動物を含むさまざまな神がいる」(BBC6月25日)「その貢献によって、たまは動物の神々を称える日本の土着宗教の例を踏まえて、死後に女神の地位を獲得した」「8月中に近くの神社に安置される」(ニューヨークタイムズ)とも伝えている。

◆背後にある日本の「招き猫」信仰◆
 各紙のコメント欄には、「なんと美しい物語だ」などと読者の感動の声が寄せられている。実はたまはマイペースに暮らしていただけで、真に賞賛されるべきはアイディアマンの小島社長かもしれない、などという野暮はどのメディアも言わない。ビジネス成功談としてではなく、人と猫とのあたたかなふれあいが織り成した現代の奇跡として伝えようという、暗黙の約束があるかのようだ。背後に日本の「招き猫」信仰が意識されている可能性は考えられるであろう(ジャパンマガジン2011.11)。

 古代エジプトには猫の神が存在し、西洋には黒猫に魔力を認める風土があったように、日本にも猫に特異な呪力があるとする俗信があった。しかし、貧苦困窮する寺に人を招き寄せ、寺を繁栄させたなどの伝承が示すとおり、時にその特異な力は困窮する人を助けることもあると信じられ、養蚕・航海の守護神ともなってきた。まさにたまは、経営不振にあえぐ貴志駅に人を招いた、現代の生ける招き猫であった。

 福を呼ぶ招き猫の置物が、現代的なキャラクター商品に変容した「キティちゃん」は、日本の“kawaii”を代表する世界的な人気者になった。もっとも、昨年8月、キティちゃんは猫をモティーフにしたものの、猫ではないとサンリオ社が否定して、世界に衝撃を与えたが。招き猫伝承を踏まえてつくられた滋賀県の「ひこにゃん」も人気者である。

◆猫のいる風景を眺めるという新たなツーリズム◆
 キャラクターものだけでなく、実際に生きた猫と触れ合うひとときを提供する「猫カフェ」も日本発の新業態で、欧米にも広がりつつある。今年3月には、ロイターが愛媛県大洲市青島という瀬戸内の小島を「猫の島」として紹介した(2015年3月3日)。猫カフェに飽き足りない日本の若い女性などが、観光向けの飲食店もホテルもない、過疎と高齢化が進む島の漁村に、夥しく増えた野良猫を見るためにやってくることをレポートした記事だ。これに続いて、テレグラフが「猫好きなら絶対行くべき6つの旅先」という記事を出し、その筆頭に青島を挙げた(同3月13日)。

 日本発の新たな猫ツーリズムは、従来の観光とも野生動物観察ツアーとも違う。あるがままの猫と人間が折り合いをつけて暮らす、ちょっとレトロな生活風景は、人のぬくもりにも溢れていて、魅力的に見えるだろう。しかしそこは過疎化・高齢化など、さまざまな問題を抱えている。猫ツーリズムは、新たな「招き猫」となるだろうか。

(相庭烈)

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