来日中国人観光客、前年比2倍!? 買い物だけじゃない、彼らの目的とは
19日、中国は旧正月にあたる「春節」を迎えた。多くの中国人が休みを利用して、国外へ旅行に出かけたが、日本を訪れた中国人旅行者の数は例年になく多かったようだ。海外各紙は、中国人の「日本熱」と、さらに旅行者を増やそうとする日本の動きを報じている。
◆年収要件の緩和で、中国人旅行者増
日本政府観光局(JNTO)によると、2014年、前年よりも80%以上多い240万人の中国人が日本を訪れた。それまでで最高を記録した年の2012年よりも約70%増だ。
近さが日本人気を押し上げている要因だ、とウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)はみている。中国の一部の地域は、首都北京に行くよりも日本へ行くほうが近いくらいだからだ。
香港サウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙(SCMP)では、旧正月の旅行者の数は、昨年の2倍だった、と中国の旅行業者が述べている。同紙は、円安が続く限り日本熱は続くだろう、と予測した。
WSJは中国人旅行者の増加について、円安で、買い物がより楽しめると「お得感」を要因に挙げた。また、SCMPも、日本製ということが何よりのブランドで、香港で買うよりも20%から30%も安く買える。誰もが大量に日本で買い物をすると説明している。
さらに、日本の外務省は1月、観光業を振興し経済を活性化することを目的として、中国人旅行者に対してビザ発給要件を緩和した。日本外務省は、年収の要件について公表はしない方針のようだが、SCMPは、25万人民元から10万人民元あたりに引き下げられた、と報じている。それによりより多くの中国人が日本へ旅行することができるようになった。
一方で、ワシントン・ポスト紙は、中国人旅行者は寿司を食べたり、買い物をしたりするために日本へやってくるが、最近では、金で買うことのできない新鮮な空気を求める人々も増えている、と報じている。北海道を訪れた中国人観光客は、「青い空ときれいな空気が素晴らしい。自分の地域にはないものだ」(WP)と感動を表している。
◆地方の魅力も発信
在上海総領事館は、さらに数字を押し上げようと、JNTOや上海の地方政府と共に、日本への旅行を促進する組織(Shanghai Visit Japan Promotion Group)を立ち上げた。目的のひとつは、中国人旅行者に、あまり知られていない日本の地域を訪れてもらうことだという。
総領事館のイトウ氏によると、中国からの旅行者のうち半数以上が、東京から、京都、大阪といったいわゆるゴールデンルートを辿るそうだ。もしこのまま中国からの旅行者が増え続ければ、よく知られた地域だけでは、観光のインフラが、限界に達するかもしれない、と同氏は危惧している。「だから、中国人がこれまであまり良く知らなかった地域についても、十分魅力があるのだと売り込みをしている」(WSJ)とし、九州の島々や、温泉などの認知に力を入れているそうだ。
同団体は、中国人の関心を引きつけるため、地下鉄の駅などの公的な場所に、九州についての広告を展開。ツアーを組んでもらうため、島や見所を紹介した旅行会社向けの一連のパンフレットも制作したという(WSJ)。
◆中国人旅行者のマナー
日本は、なかなか完全に脱することのできない不景気にいまだ苦しんでいる。そのため、中国人旅行者が落とす金は歓迎するが、我慢しながら受け取ることもしばしばだ、とWPは報じている。
同紙は、日本について、エレベーターでのマナーや会食での振る舞いなど大衆の中での決まりごとに関し、繊細な礼儀正しさと執着心で有名な国だとし、しかし中国人は、どちらかといえば、そのようなことにほとんどとらわれない、と文化の違いを指摘した。
中国人旅行者に対しよくある不満は、あまりに騒がしく、周りの人に気を使わないということだ。しかし、海外での中国人旅行者の悪評は、中国国内でも問題にせずにはいられなくなっているようだ。中国の習近平国家主席は昨年、旅行中のマナーを改善するよう国民に呼びかけた。
ある飲食店経営者は、中国人のマナーの悪さには不満だが、彼らなしでは観光業が成り立たないため、我慢するしかないとWPに話した。「お互い様だ。彼らが来てくれることには感謝している。しかし、もう少し(日本の)習慣への気配りもしてほしい」(WP)と話している。