必死の自衛官募集策に海外注目 AKB起用、写真集発売…最大の敵は若者の無関心
少子化を受けて、自衛隊は若い世代にも関心を持ってもらうように、写真集を出版したりやポップアイドルを用いたりなどの努力を見せている。しかし、日本の少子高齢化社会問題は、国の安全保障において喫緊の課題との分析を海外メディアは示している。
◆若い世代の関心を引きたい自衛隊
11月21日付のロイターと19日付のオーストラリアの公共放送スペシャル・ブロードキャスティング・サービス(SBS)がそれぞれ、日本の自衛隊が若い世代の関心を引くための努力の一環として、若者文化を取り入れたプロモーションを行っていることを報道。
今年の5月に写真集とDVDそれぞれに発売された、『国防男子』『国防女子』。総勢60人の海上自衛隊隊員が、アイスクリームをなめたり、上半身裸を見せたりなど、アイドルやファッションモデルさながらのポーズを取った姿が収められている。
海上自衛隊の広報担当者によれば、「この方法は、必ず私達のメッセージが若い世代に届けられるのに役立つと思います。日本では”キュートさ”が評価されているので、このシリーズは皆さんが海上自衛隊の本当の顔を知ってもらうためのショーウィンドウとして機能しえます」ということだ(SBS)。
ロイターはまた、自衛官募集にAKB48の島崎遥香を起用したことや、女子高生が戦車に乗って戦うTVアニメの『ガールズ&パンツァー』なども紹介している。
◆少子化で新規隊員の採用がままならず
これらの背景にあるのは、自衛隊が日本社会の急激な少子化で隊員の新規採用に苦労しているということが、両メディアで挙げられている。
現在の自衛隊の隊員数は22万5000あまりだが、現状でも充足率91.3%と、定員を満たしていない。
また、若い世代の自衛隊への無関心も影響しているようだ。ロイターは、家族や友人に自衛隊関係者がいないと若い世代にはあまりその存在を認められていない、との隊員の言葉を引用している。
◆少子化は国家安全保障上の最重要課題
この問題を深く掘り下げて分析しているのが、軍事情報ブログ、『オーバート・アクション』に11月11に掲載された記事だ。
記事では、日本の国家安全保障問題での最大の課題は、中国でも北朝鮮でもなく、少子化問題としている。
現在、日本は1億2700万人ほど人口を抱えているが、国立社会保障・人口問題研究所によれば、2060年までには8600万人に、2100年までには半分以下の5000万人弱になると推計されている。
人口が減少すれば、優秀な人材獲得のための競争が激しくなり、自衛隊を人生のキャリアプランとして選択する人はあまり多くないのではないかと、オーバート・アクションは見ている。
第二次世界大戦以後2世代にわたって、実戦での戦闘を経験をした自衛隊隊員は皆無である。有事の際には、銃の引き金を引くことになる状況に、やっと生まれ育った息子や娘を置くだろうか?と同記事は疑問を投げかける。
解決策として、防衛省は手厚い育児支援を図るべきと提案する同記事だが、自衛隊がどこまで解決策の手を広げるか、今後が注目される。