120ヶ国で合法のカジノ、公営賭博大国・日本で非合法の理由とは? 法制度・道徳の影響
2020年、戦後日本で初めて、合法的なカジノができるかもしれない。過去、合法化が検討されながら、様々な問題のため実現できなかったカジノ。世界120ヶ国以上では合法にも関わらず、日本ではなぜ非合法な状態が続いてきたのか。
◆世界では合法なカジノ
現在の日本では、賭博行為が刑法で禁止されているため、カジノは非合法だ。なぜ、日本と世界でギャップがあるのか。端的に言えば、歴史と法制度の違いといえる。
そもそもカジノの起源は欧州である。原型となる施設ができ、普及が始まったのは18世紀とされる。当初は貴族や富裕層の社交場という面が強かった。英仏独などでは、格式高い施設が今でもいくつか存在する。
アメリカでは欧州と異なり、カジノ都市・ラスベガスのように、娯楽ビジネスとして発展した。1931年にネバダ州で合法化された後、1940年代からカジノ施設ができはじめた。60年代以降には、カジノにショーやホテルなどを組み合わせたリゾート施設が相次ぎオープン。一般的に24時間営業でドレスコードもゆるく、欧州とは異なる発展を遂げた。
昨今は、東・東南アジアの動きが激しい。マカオやシンガポールなどが経済発展目的からカジノ開発を進め、莫大な収益をあげるようになっている。特にマカオの市場規模は4.5兆円で、アジアNo.1だ。
◆日本でカジノが非合法な理由
一方、日本においては、賭博(金品を賭けて、偶然性が含まれる勝負を行う)の常習、開帳は罪に問われる。「勤労の美風」を損ない、国民経済に悪影響を及ぼすから、と説明される。
しかし、国際カジノ研究所所長の木曽崇氏によると、このように道徳的に禁じるという考え方は、海外ではほとんど通じないという。儒教文化、特に朱子学や陽明学の影響が大きいようだ。なお、孔子は賭博を明確に禁じていない。
このロジックは、競馬、競艇、競輪、宝くじといった公営賭博の存在と、一見矛盾する。過去の判例では、「公の目的をもって」特別に運営される場合に限り、得られる社会的便益が賭博の害悪性を上回る、として認められているのだ(『日本版カジノのすべて』)。
カジノ合法化の検討にあたっても、上記を参考に特別法を定める必要がある。これまでは「言ったもの負け」(木曽氏)な政治事案だったが、今秋の臨時国会で基本法が制定されれば、大きく前進することになる。
◆パチンコの影響も
また、これまでできなかった背景には、全国1万店以上が存在するパチンコの影響もあると思われる。
海外では賭博として規制されることもあるパチンコだが、日本では風営法に基づき、「遊技」として位置づけられている。客は、「遊技」で得た球を、パチンコ店指定の特殊景品と交換し、それを別の業者が運営する「景品交換所」が買い取り、客は現金を得る(「3店方式」と呼ばれる)。カジノ合法化にあたり、3店方式を「制度的に明文化すべき」、「禁止すべき」という、相反する主張があるという(『日本版カジノのすべて』)。こうした現状が、議論を困難にしてきた面もあるだろう。
日本でカジノ解禁議論がここまで前進したのは初めてのことだ。拙速な決定は避けるべきだが、リスクに対する施策の検討も踏まえた前向きな議論となるか、注視したい。
※参考書籍
日本版カジノのすべて(木曽崇)