日本の「マタハラ」、ウーマノミクスを妨害? 在日外国人も被害、海外メディア注目
女性の労働環境を整備し企業での活躍をうながすことで、経済を活性化させようという「ウーマノミクス」を前面に打ち出す安倍政権。しかしながら、女性の社会進出が増加するにつれ、妊娠・子育てにまつわるハラスメント「マタハラ」のケースも増加している。しかし、それらの解決が日本全体の活性化につながるだろうと海外メディアは伝える。
【女性の活躍に立ちふさがる「マタハラ」】
安倍政権は、自身の経済成長戦略「アベノミクス」の柱の1つとして、「女性の活躍推進」を掲げている。2020年までに女性管理職を30%程度とすることを政府目標とし、9月30日には、厚生労働省が臨時国会に提出するための女性の活躍推進法案の枠組みを決定した。
しかしながら、それに立ちふさがるのが、妊娠や子育てにまつわるハラスメント「マタニティ・ハラスメント」(略して「マタハラ」)の問題だと海外メディアが伝える。
ロイターの9月24日付の記事によれば、1990年代後半からの不景気により単一の収入源による家計の維持が難しくなり、女性が出産後も仕事を続けるケースが増えたが、それと同時に、妊娠や子育てに対するハラスメントや差別に関する苦情も増えている。
2014年3月までの1年間で、2085件もの苦情が政府に寄せられ、6年前から18%の増加となっているということだ。
【さまざまなハラスメントを受ける女性たち】
また、ロイターはマタハラの実例として、妊娠と流産の際に上司からのハラスメントを受けた女性や、妊娠に際した異動で役職を外された女性が最高裁で争っている件を紹介している。
小酒部さやかさんは、2度流産した際に上司から「2、3年は仕事に集中したら」「その後、子作りは再開しているの?」(ロイター)などの言葉を受けたということである。
また、最高裁で争われているケースでは、理学療法士が妊娠を機に身体的負担の少ない仕事にしてもらうようにお願いしたところ、副主任の地位を外されたとのことだ。
日本の法律では、女性が妊娠期間中に身体的負担の少ない仕事を求める権利を保証している。
【在日外国人も被害に】
被害に遭っているのは日本人ばかりではない。在日外国人のマタハラのケースをジャパン・タイムスが報道している。
7月7日の記事によれば、ビジネスコーチとして働く、記事ではエイミーと紹介されている女性は、育児休暇から復帰しようとしたところ、上司から彼女はもう必要とされていないと告げられた。
また、カーリーンと呼ばれる女性は、妊娠を会社に告げると自主的に辞めるように仕向けられたり、語学教師のジェニーは、会社が非協力的だったため、出産・育児休暇中の給付金手続きのために8ヶ月も戦わなければならなかった、と伝えている。
【女性のためだけでなく、社会全体のために】
安倍政権の女性の活躍を後押しする政策を紹介しつつも、厳しい労働環境のためにマタハラが起きていると伝える、9月26日付けのディプロマットの記事では、この問題の解決が女性の役割だけでなく、ワーク・ライフ・バランスに対する人々の考え方を変化させるだろう、と提案する。
安倍政権の政策という上からの変化だけでなく、訴訟などによる下からの動きを合わせれば、人々の意識を変化させるのに効果的な方法であるし、そのことがひいては、安倍政権の究極のゴールでもある出生率の増加という結果になるだろう、と述べている。
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