“使い捨て”労働者の待遇改善こそ、アベノミクス成功に必要? 海外紙指摘
『Japan’s Disposable Workers(日本の使い捨て労働者達)』というタイトルがつけられた映画シリーズが、ハフィントンポストで紹介されている。
同メディアによると、貧困から抜け出せずにいる日本の非正規雇用労働者たちを描いた3シリーズであり、それぞれ、貧困から抜け出せずに自殺した労働者、住居をもつことができずネットカフェで生活する労働者、貧困にあえぐ労働者が集まる「ゴミ捨て場」と呼ばれる町を描いているという。日本の労働市場で何が起こっているのだろうか。
【労働力不足】
貧困から抜け出せずにいる労働者が多くいる一方で、この夏、大手牛丼チェーン店は、人手不足を理由に全店舗の10分の1にあたる店舗の営業を休止する事態に見舞われた。また、建設現場でも東日本大震災の復興事業や、2020年に開催されるオリンピックに向けた建設ラッシュが重なり、現場監督が不足しているという。
【矛盾はなぜ起きているのか】
英フィナンシャル・タイムズ紙(FT)は、労働力不足や有効求人倍率がこの20年間で最高水準に上昇しているのは、人口動態に起因しているという。第1次ベビーブーム世代が退職する一方で、出生率の減少により、それに見合うだけの新しい労働力を確保できないというのだ。さらに、「プレカリアート」とよばれる、不安定な雇用により貧困から抜け出せない、その日暮らしの非正規雇用労働者が多くなっていることも指摘している。
同紙によると、日本の労働市場は変わった構造になっているという。終身雇用制が一般的であった頃とは異なり、現在では、40%近い労働者が非正規雇用労働者である。こうした労働者は、低賃金の職場でしか働けず、プレカリアートとなっている。プレカリアートは、インフレ政策により賃金が上昇しているにも関わらず、その恩恵を受けることができていないというのだ。
【貧困からの救出と労働力確保】
労働力が不足している一方で、安定した職に就けない労働者がいるという矛盾を解消するためには、過剰に守られた正規雇用労働者と、非正規雇用労働者の格差を解消すべきだ、とFTは指摘している。非正規雇用労働者の待遇、賃金を改善することで、雇用の流動化、オープン化につながり、企業も資源の最適投入が可能になる、としている。
加えて、外国人労働者の受け入れと、女性の有効活用を、やるべきこととして挙げている。これらを実現してこそ、規制改革を標榜するアベノミクスの成功につながる、という論調といえる。
また同紙は、上記の方針を実行できれば、少子高齢化・人口減少問題解決へも寄与できる、とみている。
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