笹井氏自殺、世界も衝撃 一連のSTAP論文騒動、日本の科学界への信頼失墜と海外報じる
理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の副センター長、笹井芳樹氏が、5日午前、自殺した。
5日午前9時頃、CDBに隣接した先端医療センターの建物内で、首を吊っている笹井氏が発見され、病院に搬送されたが、2時間後に死亡が確認された。事件現場と笹井氏の秘書の机に遺書が残されており、警察は自殺と断定した。
笹井氏は、掲載誌『ネイチャー』から取り下げられたSTAP細胞論文の共著者で、小保方晴子氏の実験を基に、執筆を指導していた。
【事件の概要】
幹細胞研究、特にES細胞研究に関しては、笹井氏は世界のトップレベルの研究者であり、2012年にはマウスの細胞から目の網膜を生成するなど、再生医療に多大な貢献もあった。
理研理事長の野依氏は「世界の科学界にとってかけがえのない科学者を失ったことは痛惜の念に堪えません」とコメントしている。菅官房長官は「世界的に大きな功績があった。非常に残念だ」と述べている。
【STAP細胞論文撤回問題と笹井氏の立場】
騒動の発端となったSTAP細胞に関する研究、論文の執筆において、笹井氏は主たる執筆者である小保方氏を指導する立場にあった。1月にネイチャー誌に発表された論文には程なく疑義が出され、7月頭には撤回された。笹井氏は、論文の撤回には同意しつつもSTAP細胞仮説自体については肯定する意見を表明していた。
この問題について、理研の改革委員会は、笹井氏の「責任は重大」としている。
理研の発表では、笹井氏はストレスによって3月から1ヶ月程入院していた。また、広報室長の加賀屋氏の話では、「疲労困憊」しているようだったとのことだ。
【海外の報道の視点は?】
5日時点での海外の報道は、事件発生当日ということもあり、事件の概要と笹井氏の来歴を述べるに留まっているが、着眼点が少しずつ異なる。
ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、公式に発表されたコメントや各メディアが過去に掲載した記事などから状況を包括的に描き出している。また、笹井氏の人柄について、2012年に、真面目で自制力があるとネイチャー誌が評していたと伝える。
一方、ワシントン・ポスト紙は、6月のSTAP細胞関連論文の取り下げに際しての笹井氏のコメントを大幅に引用し、スキャンダルに関わってしまった、悲運の科学者のストーリーを紡いでいる。
ロイターの記事は、全体としては理研による緊急記者会見の内容に基づいているが、STAP細胞問題に関する説明の中に「科学研究における国の評判を損なった」「日本の科学の信頼性に対する疑いが起こった」と、日本全体の問題として捉える視線の存在が示唆されているのが特徴的だ。