日本の原発、再稼働できるのは3分の1? 海外メディアが課題を分析
1日、福島第一原発周辺の避難指示が一部解除された。事故後3年、いまだ9万8000人いるとされる避難者のうち、対象者はわずか117世帯約350人に過ぎないが、進展ではあると各紙は報じている。
ただしディプロマット誌は、その住民たちも帰宅に際し、放射線を不安視していると指摘する。国内報道では、避難指示解除に伴う東電からの補償金打ち切りについても言及されている。
【いまだ止まぬ不安】
折しも、青森県下北半島で建設中の大間原発に対し、対岸30km圏内に入る函館市が建設差し止め訴訟を起こしている。3月の東京新聞による世論調査では、69%が、即時ないし時間をかけての原発全廃を望んでいた。
しかし各紙とも、安倍政権はなおも原発再稼働を推進していると報じている。原発停止により化石燃料の輸入が増大し、温室効果ガス削減や貿易収支、電力会社の経営の上で、障害になっているためだ。「核の潜在的抑止力」の観点から推進する声も、一部政治家の間で根強い。
【各原発の課題】
再稼働に際し地元を説得するためには、ロイターの表現によれば「地震学的、経済的、物流的、政治的なハードル」をクリアしなければならず、そのために安全基準は従来より厳しくなった。その結果、ロイターの分析では、福島第一原発以外の48原子炉のうち、少なければ3分の1、多くて3分の2しか、再稼働は不可能だろうというのだ。
分析によると、14炉はおそらくいずれ再稼働され、17は不確実、17は無理だろうとのことである。
例えば、福島第一の避難区域内でもある福島第二や、活断層の直上と疑われている福井県の敦賀原発などは、「再び火が灯ることは非常に考えにくい」。愛媛県の伊方原発1号機など12炉は、今後5年以内に40年の標準的耐用年数に達する。新潟県の柏崎刈羽原発などは、技術的にはともかく、県の反対が強い。静岡県の浜岡原発は、ある地震学者によれば、4つの主要プレートが会合する位置にある「国内で最も危険な核施設」であるという。
また朝日新聞の調査では、16原発のうち10について、半径30kmを完全にカバーする避難計画がないことがわかった。
【「ベースロード電源」には足りず】
そうなると、福島事故前は日本の電力の30%を供給し、さらに拡大中であった原子力発電は、全体の10%以下にしかならなくなる可能性があるという。政府は原子力発電を、安定して定常的需要を満たす「ベースロード電源」と位置付ける考えだが、これではその役を果たしそうにない。
今週政府の原子力委員会の副委員長を辞任した鈴木達治郎氏によると、政府は「古い原子炉を、より安全な新しい原子炉と交換する方が良い」として、新炉建設を推進するだろうという。
【なぜ川内?】
ロイターによると現在、8電力会社が再稼働に向けて、10発電所にある17炉の安全審査を原子力規制庁に要求している。同庁はこのうち、鹿児島県・川内原発の2炉を優先審査すると表明した。
ある専門家はこれを、「一番地元の支持があり、かつ政治活動の中心からはまだ遠い、一番近代的・先進的な所で再稼働をやるという政府は、信じがたいほど狡猾だと思います」と評している。ロイターは、再稼働を支持する地元自治体は「雇用や政府補助金の形で地域社会にもたらされる富」を求めているのだと書いている。