海外紙が注目する日本の高齢者対策 コミュニティでの仕事を通じて“第二の人生”を

 わが国では現在、4人に1人が65歳以上という超高齢化社会を迎えている。平均寿命は、男性80歳、女性86歳。一方で、出生率は低下しており、日本の人口は減少に向かっている。そのため、高齢化は今後ますます加速していくだろう。

 誰にとっても無関係ではない、高齢化の問題。わたしたちの社会は、どう変化していくのだろうか。

【健康があればこそ】
 「日本の高齢化において有利な面は、単に長生きなばかりでなく、健康でいられる期間が長いこと」だ、というミシガン大学ジョン・クレイトン・キャンベル名誉教授の言葉を、フィナンシャル・タイムズ紙は伝える。そして日本各地から、趣味に仕事にボランティアに、と元気に活動する高齢者を紹介している。世界保健機関(WHO)が2000年に行った調査では、日本人は平均して74.5歳まで健康な生活を享受する。イギリスでは71.7歳、アメリカでは70歳である。

 同教授は、日本の高齢化について長らく研究してきた。2017年ごろには、65歳以上の高齢者の絶対数は、ほぼ横ばいになると予測する。それにともなって、医療費も横ばいになると見ている。また、日本の医療費は、一人当たりで見ると、先進国の中で最低レベルであるという。和食文化などの生活スタイルを、その一因として挙げている。

【生きがいを探して】
 カナダのバンクーバー・サン紙は、柏市と東京大学高齢社会総合研究機構、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が柏市豊四季台で行っている、大規模な社会実験について詳しく報じている。東京のベッドタウンとして発展した柏市にある豊四季台団地は、高度経済成長期に建てられ、現在、7千人いる住民のうち、40%が65歳以上の高齢者であるという。東大の秋山弘子・特任教授はこう語る、「60代の人たちは健康で、知識や技能、社会的ネットワークがあるのに、柏で引きこもっていて、何をしていいかわからないでいる。これまで(市外で働いて)柏で過ごすことがなかったためです」「働くこと、職を持っていることはとても大切なことです。特に男性にとっては」。

 そこで、官民共同のこのプロジェクトでは、高齢者の住民が望むだけ活動的でいられるよう、さまざまな職を同地区内で設けつつある。農業、温室農業、給仕、デイケア・スタッフなど、70余りの職種が考えられている。
バンクーバー・サン紙は、参加した住民が、仕事を通して人間関係を作ることに手応えを感じている声を紹介している。

 労働人口が減って税収が落ち込み、医療費や年金支出が増大している現在、秋山特任教授は、75歳まで働く人の割合を大きく伸ばしていく必要がある、と語る。「現在の社会構造では、超高齢化社会のニーズを満たすことができないのは明白です」

 同様の主張は、慶応大学学長であり労働経済学を専門とする清家篤教授からもなされている。75歳までは大きな問題なしに働けるだろうと語り、現在65歳である法定定年を見直すことを提唱している。ただしそのためには、年功序列で賃金が高くなるシステムを変えていかなければならないとしている。

 ちなみに、同教授の調査によると、現在、日本では、60歳から64歳の男性の77%が働いているのに対して、ドイツでは50%、フランスでは20%であるという。65歳以上では、2009年のデータで、日本では男性の29%、ドイツ6%、フランス3%であった。

【気になる出生率の低さ】
 フィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、日本の出生率は1.41(2012年)で、人口を維持するのに必要とされる2.1を大きく下回る。韓国、台湾は日本を下回り、ドイツ、イタリアは日本とほぼ同水準であるという。

 出生率の低さは世界的な現象で、世界人口のほぼ半分をカバーする62ヶ国において、2.1を下回っているという。

Text by NewSphere 編集部