核のゴミ、政府主導で処分地決定へ 30年以上かけたスウェーデンに学べるか?
経済産業省の有識者会議が、新たなエネルギー基本計画の計画案をまとめた。原子力については、安全性の確保を大前提に活用していく、「基盤となる重要なベース電源」としている。原子力を含めた電源構成比率は、はっきりと示していない。電力システム改革の推進や国際的なエネルギー供給の変化を見据え、18~20年を集中改革実施期間として政策方向を定める方針のようだ。基本計画案は、年内にも開く関係閣僚会議で議論したうえ、年明けに閣議決定される。
現在国内の原発50基すべてが停止しており、14基が再稼働の申請を行っている。政府は、原子力規制委員会によって安全と確認された原発の再稼働に関し、懸念を軽減させるため最大限の努力をする、としている。
【 原発稼働ゼロ政策から一転 その背景は 】
エネルギー基本計画の素案は、前政権の民主党が掲げた「2030年代の原発稼働ゼロ」政策から転換した考えだ。世論や野党から反発の声もあがっている。
転換の背景には、火力発電の燃料に必要なエネルギー輸入による、記録的な貿易赤字があげられる。9月の貿易赤字は9321億円に達し、14年ぶりに単月記録を更新。4月から9月までの赤字額は5兆円に迫り、これも過去最高を記録している。
高くつく石油や石炭などのエネルギー輸入依存を減らし、原発によるクリーンで安価かつ安定した電力を供給する狙いが安倍首相にあるようだ、とOILPRICEは報じている。
計画案では、政府がすべての原発に要求される新しい規制基準と将来起こりうる災害などを防ぐための新しい安全策に関するすべての情報を公表しなければならないと提言している。
【 原発廃棄物の最終処分地 国の主導で選定? 】
茂木経済産業相は、放射線廃棄物の最終処分地に関して、国が主導で候補地を選定する新しい方式案を示した。
これまでは地方自治体の「挙手」による応募方式であったが、10年以上も候補地が決まっていない。一度2007年に高知県東洋町が正式に応募したものの、住民などの反発を招き応募は取り下げられている。
その後の福島原発問題でさらに難航し、自治体からの正式な応募がなく、いまだ最終処分地が無い状態が続いている。使用済み核燃料の再処理後に残る「高レベル放射線廃棄物」は、1970年代から蓄積されており、約17,000トンにのぼっている。
青森県六ヶ所村にある原子燃料サイクル施設では、高レベル放射線廃棄物を安定した物質であるガラスを混ぜて「固化体」にしている。この施設は固化体を30~50年かけて冷ます中間貯蔵として用いられており、最終処分地となることは拒否している。
世界で最終処分地を決めているのは、フィンランドとスウェーデンだけである。スウェーデンの廃棄物管理会社(SKB)の広報担当者は、「30年のリサーチを要した」と述べている。国内のあらゆる場所を調べ、地震から次の氷河期まで可能性のあるすべてのシナリオを考慮にいれた、とドイツ国際放送Dutche Welleが報じている。
最終処分地の決定は、最重要課題の一つとして10年以上前から取り組みが行われてきたが、国主導により、実現に向けて大きな一歩を踏み込んだ形となった。