福島沖の風力発電所、運転開始 原発代替への期待も、海外紙は冷静な報道
経済産業省が福島県楢葉沖約20キロに設置していた「浮体式洋上風力発電所」が11日、運転を開始した。「ふくしま未来」と名付けられた施設は出力2メガワット。併設した世界初の浮体式洋上変電所「ふくしま絆」から海底ケーブルで、東北電力に電力を供給する仕組みだ。
この事業を委託された、企業・大学11団体で構成する「福島洋上風力コンソーシアム」は来年、出力7メガワットの風力発電所2基を増設する予定だ。
経産省の赤羽一嘉副大臣は運転開始式で、「福島県を再生可能エネルギー先駆けの地にすることは政府の使命である」と述べた。福島県の佐藤雄平知事は、「福島は未来に向かって一歩ずつ進んでいる。その1つのシンボルが浮体式洋上風力だ」と語った。
【世界初、浮体式洋上変電所が併設されたウィンドファーム】
政府は風力を重要な再生可能エネルギーととらえている。先月28日には長崎県椛島沖に環境省が支援する洋上風力発電所が運転を開始したばかり。世界では2009年にノルウェーで、2011年にポルトガルで洋上風力発電所が設置されている。
浮体式洋上変電所が併設されたウィンドファーム(大規模風力発電所)は、福島が世界初。日本は50~200メートルの深海に囲まれており、従来の風力発電所を設置するにはコストがかかり過ぎる。そこで変電所を併設することで、深海で動作可能とした。この技術で日本は国内電力総容量の5倍以上、約1570ギガワットの洋上風力発電を目指す。
ブルームバーグは、深海に囲まれた日本において、福島をクリーンエネルギーの拠点とする計画の象徴だと報じた。
【洋上風力発電は、大量の電力を安定供給できる原発に代われるか】
また資源エネルギー庁は、福島原発を2020年までに超大型風力発電所に置き換える計画を発表した。
今回の福島プロジェクトのリーダーである東京大学の石原孟氏によると、これは「2040年までに再生可能エネルギーを100%以上にする」という福島県の目標に対して7%貢献するという。同氏は最終的に日本が電力需要の3分の1を洋上風力発電で賄うことを望んでいるという。
しかしその夢は現実的ではないと、サイエンティフィック・アメリカン誌は指摘した。東京大学のポール・スカリス研究員によると、風力発電は日本の総発電容量の0.9%程度だという。また政府や経団連などは、風力などの再生可能エネルギーだけでは原発のような安定した大量発電は不可能だと主張している。
【2015年の商業化に向けた今後の課題とは】
本プロジェクトは2015年の商業化を目指しているが、その前に地元漁師の承認が必要など困難な課題もある。その一方で、世界中に先進エネルギー技術を売るという日本の願望が強調されたとハフィントン・ポストは報じた。丸紅などの商社は世界各地で積極的に再生可能エネルギーを利用した電力事業に投資している。
同サイトのコメント欄には、「日本、やったね」「すぐに市場で最もホットな風力発電所となる」などの意見のほか、「日本が今するべきことは、すべての原発を停止すること。さもないと50~100年後の日本はない」などのコメントが寄せられている。