新国立競技場、当初試算から1700億円オーバー 計画の甘さを海外が批判

 下村博文五輪担当相は23日、参院予算委員会で、2020年の東京五輪・パラリンピック主会場となる新国立競技場(東京都新宿区)計画の縮小を検討することを明らかにした。下村氏は、競技場建設と周辺のインフラ整備ための3000億円という予算は「あまりに大きすぎる」との考えを示した。

 新競技場は、2012年11月のコンペで優勝した、イラク人でイギリス在住のザハ・ハディド氏によるデザインだ。座席数が、従来の競技場の約2倍の8万席で、屋根が開閉する初めてのオリンピック競技場となる計画だ。

 新競技場建設は来年に開始が予定されている。

【大きく膨らんだ予算】
 当初の予算は現在の半分以下、1300億円と見積もられていた。しかし、競技場建設地整備のための既存の建造物の取り壊しやインフラの建設のため、さらに1700億円必要ということがわかり予算が膨らんだ、と海外メディア、ヴァージが報じている。

 ワシントン・ポスト紙は、新競技場の計画は今年初め、東京都と政府により承認されたが、下村氏の発言は、この計画方針の見直しを明らかにしたものだ、と報じている。

 23日の発言では、どのように縮小するか明確な内容は示されなかったが、同氏は、デザインの構想についての変更はないことを強調した。

【周辺環境に馴染む計画を】
 新競技場は、1964年東京オリンピックの際に建てられた現在の国立霞ヶ丘陸上競技場を取り壊し、建設される。また、ロイターが東京の中心部にある貴重なオアシスだと評価している緑豊かな公園の一部も、施設建設のために伐採されるようだ。

 23日の計画見直しの国会答弁は、著名な建築家を含む約100人の専門家による異例の反発を受けた後に行なわれた。海外メディア、ヴァージによると、その中のひとり、建築家でプリツカー賞授賞者の槇文彦氏は、競技場を「将来にわたってより汎用性のあるもの」に計画し直すことを求めている。同氏は、現在の計画は周辺の歴史的景観を損ない、建設と管理に途方もない経費がかかり、自然災害発生時に建物からの避難が難しいと、問題点を提起している。

 ジャパン・タイムズ紙も、新競技場の設備はすばらしいが、そのデザインは、建物を取り囲む明治神宮外苑の環境と調和せず、聖徳記念絵画館や、東京体育館などの他の公共建築物の存在を矮小化してしまう、と指摘している。

 ザハ・ハディド氏の設計事務所担当者は、彼らのデザインした競技場は、周辺の既存の建物と調和し、柔軟な設計は、様々な用途に使用が可能だとしている。

 この新競技場の記事について、寄せられた意見には、「ザハ・ハディドには悪いが、自転車用ヘルメットにしか見えない」や、「(現国立競技場について)この時代を問わない素晴らしいデザインの建物を壊そうとしているなんて。建設されてから50年間も経つけど、あのヘルメット建築よりずっと未来的だ」など否定的な意見の他、「みんなデザインに不満があるようだけど、私は、日本の風景によく合ってると思う」などの賞賛する意見もみられた。また、「日本政府が、新競技場建設にいくらかかるか、ざっと見積もることすらできないとは理解に苦しむ。既に当初の2倍に膨らんでるなら、建設が始まれば、3倍以上になるなんてこともあるかも。正気とは思えない。」と計画の甘さを指摘したものもあった。

※本文中「ピューリツァ賞」は「プリツカー賞」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。本文は訂正済みです。(2013/10/30 17:12)

Text by NewSphere 編集部