日本の「ハーフ」幻想に一石投じる 赤裸々な葛藤を描いた映画「HAFU」公開
国際化が進む中、日本でも多文化の生い立ちを持つ「ハーフ」と呼ばれる人たちが増えている。
先週末、自身もハーフである西倉めぐみ氏と高木ララ氏が共同監督を務めた「HAFU(ハーフ)」が東京で公開された。渋谷アップリンクにて18日まで上映される予定だ。
本作は、さまざまなルーツを持つ5組のハーフたちに焦点を当てた長編ドキュメンタリー。ハーフたち自身のナレーションと率直なインタビューによって、文化や外見、教育などの課題を浮き彫りにし、彼らが直面するアイデンティティの問題に迫る。
【多様な5人のハーフたち】
デイビッドはガーナ人とのハーフで、6歳で来日。両親が離婚し、8年養護施設で育った。現在、彼は日本でガーナに学校を建てる資金を集める活動をしている。
メキシコ人とのハーフの9歳のアレックスは、日本の小学校で同級生たちからいじめられ、インターナショナルスクールに転校する。
ベネズエラ人とのハーフのエドワードは、神戸の母子家庭で育ち、アメリカの大学に進学。日本に戻ることはないと思っていたが、老いた母の世話のため再来日した。
神戸で生まれ育った房江は、16歳のときに韓国人とのハーフだと知りショックを受ける。20年たった今も、日本社会でハーフとしての居場所を見つけるのにもがく。
ソフィアはオーストラリアで育ち、27歳のとき、母のルーツをたどるために東京に来た。日本での生活を楽しんだ後、結局は日本を去ることを決意する。
【自身もハーフである、監督の思い】
同作は3年半かけて、個人資金や寄付金のほか、日本交流基金やサンフランシスコ拠点のCAAM (Center for Asian American Media)からの支援を受けて製作された。
監督の西倉氏は、2つの異なる世界で折り合いをつけようとするハーフたちの物語を伝えたかったとジャパン・タイムズに語っている。また、10年前まで日本人が持っていた、裕福できれいな白人で、いずれキャスターやモデルとして華やかなキャリアを積むというハーフのステレオタイプに穴を開けたかったという。
西倉氏はアレックスと同じく、東京の小学校に通い、インターナショナルスクールに転校した経緯を持つ。その後ハワイに移り、26歳で日本に戻ってきたときに感じたことは、房江の違和感と似ているという。
一方、劇中のソフィアは、ハーフであることに苦痛を感じないものの、複雑な感情を持つ。ソフィアが日本を去ることを決断する場面について、「ほとんどのハーフは人生で一度はそう感じると思う」と同氏は語る。
【日本におけるハーフ人口】
しかし、日本を去った後に戻ってくるケースも多く、日本におけるハーフ人口は増加している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、現在、日本の新生児の30人に1人が少なくとも片方の親が外国人だという日本政府のデータがある。
西倉氏は、日本人には世界のどこにもない誠意があり、深い優しさや善意を本当に尊敬すると、日本の魅力について語っている。
ジャパン・タイムズのコメント欄には「アメリカのサードカルチャーキッズ(成長期に両親の属する文化圏の外で過ごす子供たち)と環境が似ている。自分たちがもう少し受け入れれば彼らはもっと楽になる」との意見のほか、「日本におけるハーフの子供の外国人の親の観点が抜けている」などの指摘が寄せられている。