なぜ今? 原発汚染水対策、政府が470億円投入へ
政府は3日、福島第一原発の汚染水問題について、470億円の国費を投入する方針を発表した。茂木経産相は会見で、内訳として、凍土遮水壁の建設費用に320億円、汚染水浄化設備の改良費用に150億円を充てる方針を示した。
2日には、菅義偉官房長官が、汚染水問題は「すぐに解決しなければならない大きな問題」という認識を示すとともに、東電を政府が後方支援するという手法では、根本的解決は困難との判断を示していた。そのため、これまでの「パッチワーク」的な対応から、政府が前線に立って問題解決にあたると語っていた。
【実は振り切れていた線量計】
「毎週新たな漏水が噴き出す」福島第一原発では、放射性汚染水がもはや管理不能になっていると各紙は評する。先週末には汚染水貯蔵タンク付近で毎時1800ミリシーベルトの高放射線が検出されたが、以前は100ミリシーベルトと発表されていた同地点の線量について、東電は、100ミリシーベルトが検出上限である機器を使用していたためであると認めた。
東電は1日2回、10人の作業員で行われていたタンク巡回を、2日からは1日4回、60人の作業員によるものに強化すると発表した。また、1800ミリシーベルトは到達距離が短く貫通力の弱いβ線が主体で、薄いアルミシート等で防御可能だと述べている。
現場周辺のタンクや地下室等には33万8000トン以上の汚染水があるとみられ、地下水の混入により量は増加しつつあり、保管場所は払底しつつある。田中俊一・原子力規制委員長は2日、放射性物質をろ過するなどして基準濃度以下に持ち込んだうえで、海に管理放出することを示唆するに至った。
【予算の問題】
こうした現状を受けて、政府が本格介入するにあたり、ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、どこまで予算を掛ける覚悟があるかが重要だと論じた。
政府は昨年すでに東電に1兆円の資本注入を行っているが、東電はすでに汚染水処理に9600億円をかけている。
また、全国の原発停止を受けて、化石燃料の輸入には5兆円以上が費やされている。現在2つだけ稼働している原発も、ともに15日までには検査のため停止される。
なお、これほど漏水が頻発するのはタンクの製造コストを「ケチって」、丈夫な溶接式タンクを使わなかったからだと指摘されている。