日本酒が海外で人気拡大中 “通”の飲み方は「冷酒を白ワイングラスで」

 日本酒が海外で人気を拡大している。輸出額は昨年、過去最大に達し、この10年間で約2.7倍に膨らんでいる。海外産の日本酒もポピュラーになりつつあり、アメリカでは地酒の酒蔵も各地に誕生しているという。

 寿司をはじめとする和食ブームがその大きな牽引力になっているが、日本酒は欧米の食文化そのものにも溶け込みつつあるようだ。例えば、「日本酒はチーズに合う」というのが常識で、冷酒をワイングラスで嗜むのが通の飲み方として定着しつつあるという。海外で再評価されたこうした日本酒文化が、逆輸入される日も近いかもしれない。

【10年で輸出額が2.7倍、アメリカ産の「地酒」も】
 国税庁が公表しているデータによれば、昨年の日本酒の輸出額は、105億2400万円。10年前に比べて約2.7倍に増えている。最大の市場はアメリカで、全体の約3割を占める。韓国、台湾が続き、ヨーロッパ各国でも人気は拡大している。

 ブルームバーグは「日本にある1700以上の日本酒メーカーの多くが世界市場に進出し、生産量を増やしている」と報じる。例えば、安倍首相が昨年、ロシアのプーチン大統領の誕生日に最高級銘柄を贈ったことで話題になった山口県の旭酒造は、世界17ヶ国・500以上のレストランに製品を輸出している。同社はこの10年で生産量を10倍に増やしたという。

 各メーカーは国内消費の落ち込みを補うため、10年ほど前から輸出に力を入れて始めた。大手各社は海外生産にも乗り出し、そのほとんどは米の生産が盛んなカリフォルニア州に工場を構えている。また、アメリカでは近年、現地の人が興した地酒の酒蔵も多く誕生している。2008年にミネソタ州のラーメン&日本酒レストランが地酒づくりを始めたのをきっかけに、全米に小規模な酒蔵ができ、今も増え続けているという。

【欧米ではワイングラスで飲むのが主流】
 海外市場で関心が高いのは一瓶300ドル程度の最高品質の日本酒だ。アメリカ、フランス、イギリス、オーストラリアなどでは毎月のように品評会やテイスティングのイベントが開かれている。

 こうした場に集まる「日本酒通」は、高級ワインのような楽しみ方をしているようだ。ハワイで毎年開かれている全米日本酒品評会で審査員を務めるクリス・ジョンソン氏は、酒の専門サイト『Drinks』のインタビューに対し、「飲み口がやや狭い小ぶりなワイングラス」を最適な器に勧める。日本酒を総合的に楽しむには「冷酒を白ワイングラスで飲むのがベター」だと、他の多くの「通」も主張する。

 同サイトは、おちょこのような小さな器で熱燗を飲むのは「良い日本酒を楽しむ最良の方法ではない」と記す。芳香を楽しむには、ワインと同じような飲み方、つまり冷酒を大きめの器に半分程度注ぐのが最適だといい、グラスであれば透明感などの見た目も楽しむことができるというわけだ。

【日本の器にこだわるなら「江戸切子」】
 ワイングラスも良いが、日本酒はやはり日本の器で楽しみたいという向きも多いだろう。日本にも江戸末期から伝わる「江戸切子」というガラス工芸があるのをご存知だろうか。

 東京・江東区に工房を構える「但野硝子加工所」は、江戸切子のぐい呑みとロックグラスを販売している。江戸切子作家・但野英芳氏による手作りの逸品だ。『ぐい呑み「梟」』は、梟(フクロウ)をモチーフにした容量100mlのグラスで、シンメトリーではないデザインは江戸切子では非常に珍しい。

 江戸切子は、和洋折衷の技術とセンスが生んだ工芸品だ。英芳氏は、江戸切子作家だった父の跡をすぐには継がず、一旦は建築デザイナーの道に進んで新境地を開いた。1日平均2個作るという作品全てに「1から10まで自分で考えたデザイン」が光る。海外で育まれた新たな楽しみ方で日本酒を味わうのに、まさにぴったりの逸品と言えよう。

購入ページへ:但野硝子加工所 江戸切子のぐい呑み「梟」 28,080円(税込)

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Text by NewSphere 編集部