“メタル界を破壊した”BABYMETAL、最新アルバムの海外での評価は?

 Jポップとヘビーメタルを融合させたアイドルグループ『BABYMETAL(ベビーメタル)』の待望のセカンドアルバム『Metal Resistance』が、4月1日世界同時発売された。日本1位、全米3位など、各国のiTunes総合アルバムチャートで上位にランクイン。ロンドンのウェンブリー・アリーナでも日本人初のワンマンライブを行うなど、その人気は高まるばかりだ。彼女たちの活躍を、海外メディアも高く評価している。

◆メタルとアイドルの融合
 BABYMETALは、18歳のSU-METAL、16歳のMOAMETALとYUIMETALからなる3人組アイドルで、2010年に結成。BBCは、ヘビーメタルのメロイックサイン(人差し指と小指を立てるジェスチャー)を変形させたキツネサイン(影絵のキツネの形)とともに、かなり演出度の高いショーと、Jポップとヘビーメタルを合わせた楽曲で有名になったと述べ、『Metal Hammer Golden Gods Breakthrough Artist Award』、『ボーグ・ジャパン』のウーマン・オブ・ザ・イヤーなど、数々の賞を受賞したと紹介している。

 新アルバムのレビュー記事を執筆した米メタル・メディア『MetalSucks』のライター、ジェフ・トレッペル氏は、彼女らがPerfume、ももいろクローバーZと同様、日本のアイドル産業が生み出した産物だとするが、選ばれた「kawaii」顔の彼女たちのために、驚くほど才能のあるスタジオ・ミュージシャン、ソングライター、プロデューサーが、完璧で耳に心地よいサウンドを作り上げていると述べる。同氏は、音楽に10代の女の子を用いた商売は昔からあるが、ベースにR&Bやテクノなどではなく、メタルを使った点では初めてのケースだと述べている。

◆メタルも変わる時
 このBABYMETALの活躍に憤るのが、正統派メタルファンだ。トレッペル氏によれば、引きこもりの真のメタル戦士がシャンプーより嫌うのはポップミュージックであり、むき出しの商業的野心と幅広いアピールは、アンダーグラウンド・メタルのアウトサイダー的哲学に反する。そしてこれこそが、BABYMETALへの極端なリアクションの根っこにあるものだという。

 BABYMETALほどメタル界を破壊したバンドはいないと述べる英エンターテイメントサイト『List』のライター、マット・エバンズ氏は、同じく新アルバムのレビュー記事のなかで、メタル界の出所の正しさを重要視する傾向は長所と短所があると指摘する。信者は、実在する、本物で根源的な何かに近づいた気持ちにはなれるが、そうすることでメタル自体を真剣に捉え過ぎ、本来メタルが持つ、高度に構築され、遂行的な側面を否定する危険性もあると同氏は述べる。BABYMETALは、ゾッとするような野蛮なものに大量の超かわいいアイドルポップを加えることで、(特にその結果が驚くほど効果的なだけに)極度に対立的な方法でメタルが持つカルト的正統性に挑戦している、というのが同氏の考えだ。

◆高い音楽性と今後に注目
 トレッペル氏は、ニューアルバムはメタル・アルバムとして見た場合、確かに本物ではないが、ポップレコードとしてはワン・ダイレクションやビヨンセなどよりはるかにヘビメタファンにアピールすると述べ、メタル以外にトリップ・ホップ、スカ、デジタル・ハードコアなど数々の音楽要素を取り入れた秀作だとしている。注目の曲としては、SU-METALの歌うバラード『No Rain, No Rainbow』、スタジオ・ミュージシャンの技が光るプログレッシブなメタル曲『Tales of the Destinies』、英語を取り入れメタル要素を外した『The One』を挙げ、同氏は、SU-METALのソロ活動開始、より複雑な音楽性の展開、全米制覇という、おそらく今後の方向性を明らかに示す3曲だと指摘している。

 BABYMETALを近年メタル界に起こった最も面白くエキサイティングなものと見るエバンズ氏は、2作目はデビューアルバムほどの夢中にさせる魅力に欠けるとしながらも、BABYMETALは良くも悪くも「あるべきでないもの」から「疑いなくふさわしい」領域に達したと述べている。

Text by 山川 真智子