宮崎駿監督会見:安保法制批判に海外注目 新作アニメ制作には“非常に感動的”
アニメ映画の宮崎駿監督が13日、東京の日本外国特派員協会で記者会見を開き、新作短編映画の制作を始めたことを明らかにした。宮崎監督は2013年に長編映画制作からの引退を発表したが、この作品は『三鷹の森ジブリ美術館』(東京・三鷹市)で上映する10分の短編で、同監督作品として初めてコンピューター・グラフィックス(CG)を取り入れる。
また、宮崎監督はこの会見で、安倍政権の安保法制関連法案を批判した。こちらの発言内容にも非常に注目が集まった。
◆上映時間は10分、製作期間は3年
宮崎駿監督の新作短編アニメの制作は、6月16日に開かれたトーク・イベントで、息子の宮崎吾朗監督が明らかにしていた。それが今回、初めて本人の口から公に語られた。
米『NEW YORK』誌系列のTV・映画・音楽ニュースサイト『Valture』は、「もしこれが本当なら、非常に感動的だ」「我々にとってラッキーなのは、宮崎氏が“引退”の意味をはっきりと知らないことだ」などと興奮気味に伝えている。
新作短編映画の内容は明らかにされていないが、10分程度の長さで、制作期間は3年を見込んでいるという。ただし、宮崎監督は会見で、3年を待たずにできるだけ早く完成させたいと述べている。宮崎映画を送り出しているスタジオジブリが運営する『三鷹の森ジブリ美術館』で上映するといい、一般の劇場公開や放映・配信は想定していないようだ。
◆74 歳でCGを“解禁”「大切なのは才能」
宮崎監督は、CGアニメが全盛となっても、これまで全ての作品で「手描き」を貫いてきた。しかし、この作品で初めてCGを積極的に取り入れることを明言した。制作陣は、これまでのレギュラースタッフと、CGを専門とする新たなアーティストグループの混成部隊になるという。
米アニメニュースサイト『Cartoon Brew』は、宮崎監督が昨秋のインタビューで、「キャリアを通じてコンピュターの使用を避けることができたのは、ラッキーだった」と述べたと記している。ただし、同監督は「才能が全てを決めると思う。手法よりも大切なのは、そこにつぎ込む才能だ。鉛筆描きであろうが3DCGであろうが、根本的に間違っている、あるいは正しい手法はない」とも語っている。
宮崎吾朗監督は先月のイベントで、「(駿監督は)目標が(ジブリ美術館の)維持になると退屈になってしまった。だから、彼には何か遊べることが必要だ」と、駿監督が74歳にしてCG映画を作ることにした理由を説明した(米『アニメ・ニュース・ネットワーク』)。駿監督本人は13日の会見で、引退表明後も日々の仕事のスタイルは「今までより少し遅くスタジオに来て少し早く帰る以外には変わっていない」と語っている。
◆「軍事力で中国の膨張を止めるのは不可能」
宮崎監督は13日の会見で、戦後70周年に関連して次のようなコメントもしている。「(戦時中に)起きたことを忘れたがっている人が多くいることは理解しているが、日本が長い間中国で行った愚かな行為について、我々は後悔し続けなければならない」(WSJ「Japan Realtime」)
ブルームバーグは、新作アニメよりもこうした政治的な発言に注目した記事を掲載している。それによれば、宮崎監督は併せて、安倍政権の安保関連法案を「軍事力で中国の膨張を止めようとするのは不可能だ。もっと違う方法を考えなければいけない」と批判し、「そのために平和憲法をつくったのだと思っている」と述べた。