なぜロックスターは27歳で死ぬ? ジミヘン、カートコバーン…“27クラブ”の理由を海外メディアが分析
多くの若者がロックに熱狂し、ロックが時代に対して影響力を持っていた頃があった。その頃に活躍したロック・ミュージシャンのうち、著名な何人かが、27歳で、少なからず劇的な死を遂げた。そこに特別なものを感じた人たちが、「27クラブ」というくくりでその現象を眺めるようになった。以来、「27クラブ」は、ロック史上の謎として見られるようになった。
【“27クラブ”というロック神話】
ニュースサイト『PolicyMic』によると、「27クラブ」という捉え方が広まったのは、20年前、「ニルヴァーナ」のカート・コバーンが27歳で自殺したときだった。彼はヘロインを摂取した上で、ショットガンで自分の頭を撃ち抜いたという。「あの愚かなクラブに加わらないようにと、息子には言っていた」という母親の発言を、AP通信がニュース記事の中で取り上げ、世界中に配信した。
これがきっかけとなって、「ローリング・ストーンズ」のブライアン・ジョーンズ、ジミ・ヘンドリックス、ジャニス・ジョプリン、「ドアーズ」のジム・モリソンといったロック・スターたちも、27歳で死亡していたことが、あらためて思い出されたようだ。人々の印象に残る死に方をしていたためでもあるだろう。その後、ロックばかりでなく、ブルース、R&B、ロックンロールなどのミュージシャンも、「27クラブ」に数え上げられるようになった。
【圧倒的に多い死因は“ドラッグ、飲酒”】
ユーザー記事投稿サイト『HubPages』の、「27クラブ」の“メンバー”を紹介する記事では、それぞれの死因についても触れている。それによると、上記のロック・スターたちはいずれも、ドラッグ、飲酒、あるいはその双方が原因で死亡したと考えられている。
『PolicyMic』によると、ハワード・スーネス氏は「27クラブ」に関する著書の中で、“メンバー”50人をリストアップした。その大多数は、深刻な薬物・アルコール乱用の問題を抱えていたという。また大部分は「著しく困難な子供時代」を過ごしていた、と著者は指摘している。そのために心に傷を負い、コバーンやヘンドリックスのようなアーティストは、自分でそれをどうにかしようとして、ドラッグ、アルコール、音楽に頼るよう駆り立てられたのだろう、としている。
【“27クラブ”最近の例は2011年のエイミー・ワインハウス】
最近では、2011年に、女性ボーカリストのエイミー・ワインハウスが、急性アルコール中毒で死亡したのが、「27クラブ」の例だと見なされている。一般向け心理学雑誌『Psychology Today』のウェブサイトは、死亡直後に追悼記事を掲載した。彼女は同世代のミュージシャンたちとはまったく異なり、真に、自分の中の創造性という悪魔と闘う、悩み多き精神の持ち主だった、としている。歌っている音楽ジャンルはジャズやR&Bなどだったが、記事は、彼女は時代を間違えたロック人だった、と語る。
記事では、ロックは反体制的であり、同時に個人的な闘い、自己との葛藤である、というロック観が強調される。ヘンドリックス、ワインハウス、モリソンに連なる人たちは、他人の目からは途方もない社会的成功を収めていると見えるが、当人たちは社会を嫌っており、安住することなくそこに変革を持ち込もうとしている。その一方で、自分たちは社会に組み込まれ、「消費」される対象となってしまっている。成功すればするほど、そこにとらわれることとなる。この矛盾が、「27クラブ」のロック・スターにとっては耐え難いものだったのではないか、と記事は示唆している。
【統計的に確認された、北米ロック・ポップスターの生存率の低さ】
2011年に、イギリスの大学の研究チームが、ロック・ポップスターの生存率の低さについて、統計調査を行っている。『ウォール・ストリート・ジャーナル』によると、1956年から2006年のあいだにTOP40チャートに載った、北米とヨーロッパのロック・ポップミュージシャン1,489人を対象としたものだ。
研究チームは、ミュージシャンの生存率と、同世代、同民族のサンプル全体の生存率とを比較した。結果、北米のロック・ポップスターは、比較サンプルに対する相対生存率が、名声を得てから1年後には99.3%、そこから徐々に下がり、40年後には87.6%となっていた。ヨーロッパでは、このような傾向は見られなかった。
北米では、ソロ・ミュージシャンの23%が死亡していたのに対し、バンドだけで活動するミュージシャンの場合は、10%だった。ヨーロッパでは、それぞれ10%、5%だった。
また、調査によると、1980年代以降に名声を得たミュージシャンは、60年代、70年代に名声を得たミュージシャンに比べて、相対生存率が高くなっているという。研究者は、音楽業界の「職業化」が進んでいることが、理由の1つかもしれない、と語っている。