『ゴジラ』好スタートも、欧米メディアは酷評 “日本版の風刺が滑稽なほど弱まっている”
ハリウッド版の新作『ゴジラ(GODZILLA)』が16日、全米公開された(日本公開は7月25日)。北米の初日の興行収入は3850万ドル(約39億円)に達し、今年の初日興行収入記録を塗り替えた。早速その評価が気になるところだが、「低俗、陳腐、薄っぺらい」(ワシントン・ポスト=4点満点で2.5点)、「この映画の登場人物たちはとてつもなく退屈だ」(ガーディアン=5点満点で2点)など、一部メディアのレビューは低調だ。CG表現の評価は概ね高いものの、脚本をはじめドラマパートが期待はずれだったという評価が目立っている。
ただし、『rottentomatoes』によると、アトランティック誌やニューヨーカー誌など、全米メディアの73%は高く評価している。
【反核のテーマが中途半端な「腹立たしいリブート」】
今回公開された『ゴジラ』は、1954年に日本で誕生したゴジラシリーズのハリウッド版の新作。原作の骨子を踏襲した「リメイク」ではなく、原作の要素を取り入れて新たな展開を作り上げる「リブート」作品という扱いになっている。
とはいえ、ストーリーが日本の核施設での事故から展開する点などでは、水爆実験によりゴジラが深海から蘇ったという日本版の設定をリスペクトした形になっている。しかし、ガーディアンは「日本のゴジラに込められていた反核の風刺が、この映画では滑稽なほど弱まっている」と批判する。
同紙は、1954年の『ゴジラ』を、「“核の時代”は素晴らしい科学技術の時代ではなく、不合理で制御のきかない世界だ」というテーマが「説得力をもって語られている」と評価。しかし、本作ではその扱いが中途半端になってしまっていると嘆き、「腹立たしいリブートだ」と切り捨てている。
【出演の渡辺謙らの扱いにも不満】
イギリス人の若手監督、ギャレス・エドワーズがメガホンを取り、『キック・アス(2010)』でリアルなヒーローを演じたアーロン・テイラー=ジョンソンが主役を務める。ワシントン・ポストはその演技についても、「ハリウッド映画のステレオタイプの肉体派俳優に成り下がってしまった」と落胆のコメントをしている。
日本からは渡辺謙が科学者役で出演しているが、同紙は、彼らメインキャストに「何もさせなかった」と、ストーリーラインの貧弱さを批判。その原因を、4人の脚本家のアイデアを寄せ集めた結果、物語の辻褄が合わなくなったからだとしている。そして、脚本全体を「低俗、陳腐で薄っぺらい。環境汚染への恐怖を煽ってはいるが、そこに深いメッセージはない」と痛烈に批判している。
【怪獣や破壊シーンのCGは高評価】
本作には、ゴジラのほかに劇中で『MUTO』と呼ばれる2匹のオリジナル怪獣が登場する。オスメスのつがいで、メスは卵を抱えている。空を飛び、凶暴な性格だ。ワシントン・ポストは主役のゴジラよりも目立つMUTOの扱いに、「映画の主題はMr&Mrs.MUTOの産卵と子育てへの挑戦だ。しかし、映画のタイトルは『ゴジラ』である」と皮肉る。ガーディアンも、「映画の人間たちは(ゴジラではなく)MUTOと戦っている」と、この点を指摘している。
もっとも、ワシントン・ポストはゴジラとMUTO、ハイライトのゴールデンゲートブリッジの崩壊シーンなど、CG表現については全編にわたって高いレベルにあると評価。「幸いにも、この映画の怪獣たちは迫力がある。この手の映画の観客はそれを見に来るのではないだろうか」と記している。
映画専門サイト『ザ・ハリウッド・リポーター』は、配給会社のレジェンダリー・ピクチャーズとワーナーは、北米で6500万ドル以上の興行収入を期待しているとしている。
※本文中「現地メディアのレビューは低調」は、「一部メディアのレビューは低調」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。合わせて「ただし、『rottentomatoes』によると、アトランティック誌やニューヨーカー誌など、全米メディアの73%は高く評価している」という文章も追記しております。本文は訂正済みです。(5/20)
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