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虐殺者は、なぜ喜々として殺人を「再現」したのか? 映画「アクト・オブ・キリング」が映す人間の闇

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虐殺者は、なぜ喜々として殺人を「再現」したのか? 映画「アクト・オブ・キリング」が映す人間の闇

「あなたが行った虐殺を、もう一度演じてみませんか?」。1965年、インドネシアで起きた100万人規模の大虐殺を追ったドキュメンタリー映画「アクト・オブ・キリング」が、2014年4月12日(土)公開される。虐殺の被害者に話を聞くのではなく、加害者に自分の殺人を再現させ、喜々として虐殺の過程を語る様子を映し出すことで、人間の闇を浮かび上がらせる作品だ。

【事件は長くタブーに 真相なお解明されず】
 大虐殺の被害者は、100万人とも200万人ともされる。真相は今も闇の中だ。事件の発端は65年9月30日。スカルノ初代大統領親衛隊の一部がクーデター未遂を起こし、後に大統領となるスハルト少将(当時)が鎮圧した。「黒幕は共産党」とされ、全国で同党支持者や華僑らが次々と殺害された。

 一連の出来事は「9月30日事件」と呼ばれ、共産党を容認していたスカルノが失脚し、以後30余年にわたるスハルト独裁体制の端緒となった。その後事件に触れることはタブーとされ、加害者は今も訴追されていない。

【虐殺の過去を映画化 提案に喜ぶ加害者たち】
「アクト・オブ・キリング」の舞台はスマトラ島メダン市。オッペンハイマー監督は当初事件の被害者を取材していたが、軍の妨害を受けて中断を余儀なくされた。加害者たちは今も地元で幅をきかせ、英雄気取りで町をのし歩いていた。そこで監督が加害者に話を聞き始めたところ、進んで大量虐殺の様子を語り始めた。監督は彼らに「過去の行為を映画化しよう」と提案。かつての殺人者たちは、大喜びで話に乗るのだった。

 殺人の実行部隊となったのは、地元を縄張りとするギャングたちだ。部隊リーダーのアンワル・コンゴは、元は映画チケットを売るダフ屋。「9月30日事件」後、軍の命令で住民の暗殺を始めた。「最初は殴り殺していたが、血が出すぎる。首を締める方法に変えたんだ」。虐殺を演じる過程で、アンワルは被害者役の男性の首に針金を巻き、笑いながら締め方を説明するのだった。

【民兵組織が町を支配 権力と暴力の密接な関係】
 彼らギャングはインドネシア最大の民兵組織「パンチャシラ青年団」と密接な関係を持っていた。パンチャシラは全国に数百万人の団員を擁する巨大組織。右翼的で半軍事的な“ならず者集団”で、ギャングの多くも一員となっている。ダフ屋、地上げ屋、借金取り立て屋など「裏稼業」を担う集団。政治家たちも彼らの力を借り、強権的に地域を支配していた。権力者と暴力の密接な関係は、映画は赤裸々に映し出す。

 虐殺の加害者による「映画作り」は快調に進むかに見えた。しかし、アンワルは被害者の役を引き受け、演じ始めた後、次第に変化を見せ始める。かつて自分が殺人を犯した現場に戻り、初めて被害者の気持ちを想像するアンワル。心の奥底から沸き上がるものに向き合わざるを得なくなる──。

【世界の映画祭席巻も スタッフに依然身の危険】
 過去に例のない手法で作られた同作は、2012年のトロント国際映画祭(カナダ)などでの上映を皮切りに、瞬く間に世界の映画祭を席巻した。ベルリン国際映画祭でエキュメニカル審査員賞など2賞を獲得したほか、世界15以上の映画批評家賞を受賞。50以上の映画賞に輝く快挙を遂げた。

 メディアの評価も非常に高く、英紙ガーディアン、米誌LAウィークリーなどが年間ベストワン作品に選出している。

 さらに、これまで事件に触れることがタブーだったインドネシア国内にも変化が起きている。インドネシアの歴史家で文化批評家のアリエル・ヘルヤント氏は「この映画の登場は歴史的事件だ。インドネシアにおける愛国心と正義の概念の中心にある偽善を暴き出す」と指摘。インドネシア人権委員会も「インドネシアを本当の民主主義国家に変えようと思うなら、現代史に築かれた恐怖と抑圧を認識すべきだ」と主張した。

 しかし、映画のエンドロールには多くのスタッフが匿名で登場する。インドネシアではこの映画に協力したことで、今なお身に危険が及ぶ可能性があることを証明しているのだ。

 オッペンハイマー監督とともにメガホンを取ったインドネシア人の共同監督は、以下の声明を発表した。「私の名前は明かせません。インドネシアの政治状況を考えると、本名を明かすことはあまりに危険なのです」

■映画概要
「アクト・オブ・キリング」(2012年、デンマーク・ノルウェー・英国)
監督:ジョシュア・オッペンハイマー
2014年4月12日(土)、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。
公式サイト



作品写真:(C)Final Cut for Real Aps, Piraya Film AS and Novaya Zemlya LTD, 2012

(Newsphere編集部)

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