日本がボジョレーを救った? 現地メディアと生産者の反応とは
今年もボジョレー・ヌーボーが解禁された。ボジョレー・ワイン委員会によれば、日本は昨年880万本のボジョレー・ヌーボーを輸入し、2位アメリカ(220万本)、3位ドイツ(72万本)、4位ベルギー(49万本)を圧倒的に引き離してトップだった。一方、本国フランスでは、ボジョレー地区のワインは日常酒としてのイメージが強く、いくらかの付加価値を払ってまで飲む種類のワインとは思われていない。過熱気味な日本でのボジョレー・ヌーボーの取り上げ方を、フランスはどう捉えているのか。
【日本は生産者冥利に尽きる国】
ボジョレー地区の生産者にとって、日本はうれしい存在だ。ラブレ・ロワ社のティボー・ガラン副社長は、仏フィガロ紙で「日本人はボジョレー・ヌーボーを好んで開けてくれる。しかめ面などせず価値を認めてくれて、満足してくれる」と喜ぶ。生産者にとって自分たちが造ったお酒をおいしく飲んでくれる日本は、作り手冥利に尽きるのだ。
もちろんビジネス面でも日本は重要な相手であることに間違いはない。ボジョレー・ワイン委員会でマーケティング広報を担当するアントニー・コレット氏も、「輸出されるボジョレー産ワインの7割は新酒(ヌーボー)で、日本の場合それが9割に上る。日本はアジアでもっとも成熟した市場だ」と、日本の重要性を仏ニュースサイト「ル・ドーフィンヌ」で語っている。
【日本の様子はフランスでどう報じられているのか】
箱根小涌園にあるスパ施設「ユネッサン」。ここで8年前から続く「ボジョレー・ヌーボー風呂」は、日本での人気を象徴する光景として、毎年仏メディアに取り上げられる。
同イベントに招待されたラブレ・ロワ社のティボー・ガラン副社長は、仏フィガロ紙に対し「この光景にショックを受けるかもしれないが、その必要はない。浴槽はすべてがワインで満たされているわけではないし(編注:同紙によれば1万2770リットルの浴槽に9リットルのワインが入れられているとのこと)、これはスペクタクルだ。デュオニュソス(バッカス)はワインの神だけでなく演劇の神でもある」と日本での盛り上がりを支持する。
仏レキスプレス誌も「日本人は『季節』をとても尊ぶ。その考え方にボジョレー・ヌーボーが結びついた」とボジョレー・ワイン委員会代表ジャン・ブルジャド氏のコメントを引き合いに、フランス人読者にその人気をひも解く。
【日本が育てるボジョレー】
仏ル・モンド紙によれば、今年日本は720万本のボジョレー・ヌーボーを買ったそうだ。これは昨年と比べ0.4%の減少で、1240万本を記録しピークだった2004年に比べると、半分の量にとどまっている。
しかしボジョレー地区の生産者にとって、いまだ日本が占める割合は大きい。そして売上げは、ボジョレー地区のワインの品質向上を助けている。
費用と労力をかけなければ良いワインは造れないが、日常酒としての認識が強いフランスで、ボジョレー地区のワインは大きな儲けを見込めなかった。しかし、日本で売れることによりその費用をまかなえるようになったため、生産者の中には評価を上げてきた所もある。ボジョレーを飲むことは、将来的にさらにおいしいボジョレーを味わえることにつながっているのだ。